3■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:希(了)

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 いざ、決勝戦 「のんちゃん、起きて」  珠希に頭を撫でられて、目が覚めた。 「大丈夫? 気分悪くない?」 「うん、大丈夫」  珠希は、いつもの珠希だった。それに、もう希って呼ばないんだ。  もしかして、さっきのは、夢? って不安になる。  僕が体を起こすと、珠希が近付いて来た。 「さ、決勝戦。かっこいいとこ見せてくれるんだよね?」  そう言って笑いながら、僕の頬に口付けた。やっぱ、夢じゃないんだ。そうなんだ。  僕はすっかり舞い上がって、珠希と一緒に会場に向かった。  珠希は僕の手をぎゅっと握って歩いてくれる。  珠希……好き。 ***  珠希にかっこいいとこ見せるんだ、そう思うと僕は今まで以上にやる気が湧いてきた。  サーブのコースも、スマッシュも、とにかくキマった。  それに、相手の先輩がかなり強くて、試合も楽しかった。  楽しんでいるうちに、いつの間にか終わっちゃって、気がついたら僕は優勝していた。  クラスのみんなが僕を取り囲んで、口々に褒めてくれる。 「珠希、僕勝ったよっ」  少し離れた所にいた珠希と空也先輩の元に駆け寄ると、珠希はあのくしゃくしゃの笑顔で僕の頭を撫でてくれた。僕の胸をぎゅっと掴む、あの笑顔だ。  なんだか、その笑顔を見たのが久しぶりに感じる。 「かっこよかった」 「ほんとっ?」  かっこいい、なんて言われたのは初めてで、僕は嬉しくなった。アユにも見ててほしかったんだけど、どうしたのかいない。 「珠希、でれでれしすぎ」 「うるさいよ、空也」 「希くーん!」  ばたばたと人が走って来る音が聞こえて、実と数人のF組の子たちが見えた。 「あ、久慈先輩、紫堂先輩こんにちは。ね、歩くん知らない? もうすぐ試合なんだけど、どこにも見当たらなくって、みんなで探してるんだけど」 「え? アユなら今朝部屋で会ったっきりだよ。試合見に来てくれるって約束してたんだけど、来てないし。どうしたんだろう」 「どこにもいないのかッ?」  空也先輩が鋭い声で言った。 「あ、はい、最近嫌がらせもけっこうあったし、希くんが階段から突き落とされたって聞いたから、もしかして、って」 「あ、空也っ」  実くんの話を聞いた瞬間、空也先輩は恐い顔をして走って行った。 「僕らも、手分けして探そう」 ***  思い付く場所をいろいろと探しながら、みんなで電話で連絡を取り合った。  僕は、自分に起こったことと照らし合わせて、最悪の状況も想像した。その度に涙が浮かんでくる。 「大丈夫、絶対無事だから」  そう言って珠希は僕の手をぎゅっと強く握って歩いてくれる。  最後にアユを見たっていう人たちの情報から、やっと居場所が分かった。  使われていない教室だった。  ドアには鍵がかかっている上に、鍵穴には接着剤が詰めてあった。 「なにか、工具持って来ましょう」 「いや、いい」  竜くんがそう言ったけど、空也先輩は首を振った。  空也先輩は恐いくらいで、アユのことが心配で、張り詰めているのが分かった。  先輩、ほんとにアユのことが好きなんだ。  その気迫に、誰も口出し出来なかった。珠希も、そのことをよく分かっているみたいだった。  ダンッダンッと先輩は体を使ってドアを壊した。何度目かで、ドアがばたんと倒れて、真っ暗な教室でうずくまっているアユが見えた。  空也先輩がすごい勢いで中に入って行くと、すぐにアユを抱えて出て来た。 「あれ? 何? どうしたの? みんな」  みんなの心配をよそに、アユはぽかんとした顔をしていた。 「どうしたのじゃないよ、こっちが聞きたいよ!」  僕も、心配しすぎてどうにかなりそうだったのに、もう。  だけど、その顔を見たら、ほっと安心できた。 *** 「ノン、オレ負けたから空也んとこ行ってくる」  久しぶりの4人の食事の後、アユがそう言った。なんでも相手の言うことを聞く。それが約束だった。 「ええ!…空也先輩?」  僕は、ここへ来てから少し増えた知識を巡らせて、いろいろ考えてしまった。  だって、空也先輩はアユのことが大好きで、それに、アユにキスとかしちゃったし、で、なんでも言うこときく、とか…… 「のんちゃんは、僕にまかせて」  アユのことで頭がいっぱいになっていると、珠希がそう言った。  僕、珠希の恋人になったんだ、よね? で、部屋に行くんだ。  見上げると、微笑んでいる珠希と目が合った。  今度はどきどきして、そのことで頭がいっぱいになってしまった。 (了)
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