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4■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:歩(了)
始業式
「あゆっもう、いい加減起きて~」
「…う~ん」
双子の兄、ノンの何度目かの呼びかけで、目が覚めた。
それはいつもと変わらない朝。
…なはずなんだけど、今までのシングルのちっこいベッドと違い、でかいふかふかのベッドで目が覚めた。
ふぁっ…。
大きなあくびをして、のびをした。
寮生活、三日目。
やっぱベッドがでかすぎて落ち着かず、ノンのベッドに潜り込んでいた。
今日は始業式。
明日から授業始まると思うとうんざりする。
瞼が勝手に閉じようとするけど、気にせず、洗面所で歯を磨く。
まだ着馴れない新しい制服を着て、リボンを結んでいると、チャイムがなった。
「は~い」
ノンがドアを開けると、入り口にここに来てからすぐ仲良くなった先輩達が立っていた。
背の高い、男前が二人。
生徒会長の紫堂空也、寮長の久慈珠希、学園生のトップの権利を持つという二人がにっこり笑っていた。
「歩、希、学校行こう」
生徒会長の笑顔で空也がいうと、廊下に集まった生徒が溜息をついた。
部屋を出ると、空也と珠希、二人を見たさに生徒がいっぱい集まっていていた。
みんな朝から余裕だな。
オレなんて飯食う暇もなかったっていうのに。
「歩、リボンが縦結びになってるぞ」
空也が優しく笑って、少しかがんで俺のリボンを結びなおしてくれた。
「…なんか優しくて気持ち悪い」
「何言ってんだ、いつもと変わらないだろ」
俺はうえーっと、空也に言って見せたけど、空也は気にせず俺の頭を撫でた。
「あれ?歩、べーってしてみて」
俺は空也の言うとおり、べーっとしてみた。
「ああ、こないだキスした時、これが当たったんだ」
…変なこと思い出させんなよ。
ふぅん、と一人で納得しながら、顔色ひとつ変えない空也に対して、顔が熱くなってる自分を誤魔化すように、歯で舌に開いたピアスをカチカチと言わせた。
「かわいい顔して意外だな」
「ノンに見せたらいたそう、って泣きそうな顔するのがおもしろくって」
いい加減、かわいいという言葉に反論するのはやめておいた。
俺達は、注目を集めながら、四人で講堂へ向かって、それぞれの席に着いた。
「おはよー」
だるい始業式を終えて、教室に戻ってきたけど、相変わらず反応がない。
でもやっぱりじろじろと視線は感じて、なんだか居心地悪い気分で席に着いた。
何?ほんとに。
頬杖をついて、隣の奴をちらっと見ると、じっと見ていたそいつと目があった。
…。
あんまりにも目をそらさずじっと見てくるもんだから俺も意地になって見つめ返してやった。
「おはよう」
数秒経過して、ようやくそいつが口を開いた。
「お、おはよう」
びっくりしたぁ。今更挨拶かよ。
「あの、何?」
せっかく初めて言葉を交わしたクラスメイトだ、俺は精一杯好感が持てるような笑顔を作った。
「いや、かわいいから見てた」
そう言って、そいつは表情を変えず、俺を見つめた。
…何?
得体しれない!こいつ。
「あー、竜ー。ずるーい」
どうしていいかわからず、目をぱちくりさせていると、色白で華奢な感じの奴が、竜と呼ばれた奴の首に腕を絡ませて抱きついてきた。
そして、そのまま上目遣いで俺を見ると、にっこり笑った。
…なんていうか、色気が…男なのに…。
「ほんと、かわいー。これが噂の仔猫ちゃんか」
「えっと、…こねこちゃん!?」
ふふっと笑うそいつに、わけがわからず聞き返した。
「よろしくね、あゆちゃん。僕のことはリンって呼んでね」
リンがにっこり笑うと、竜がぼそっと呟いた。
「本名は林源三郎」
「てめぇ、フルネーム呼ぶなっつっただろう」
さっきまでと売ってかわり、男らしい声でリンが竜にすごんだ。
…なんだ、こいつら…。
思わず俺がぷっと噴き出すと、クラスの奴が一斉にこっちを見た。
「俺は滝川竜」
「漢字で書くと変な名前なんだよ。川をはさんで竜が二匹」
「はは。俺、山田歩」
なんかやっとクラスの奴とまともに話ができたと思って嬉しくて、右手を二人に差し出した。
すると、二人が俺の手を思いっきり凝視した後、どっちが先に握手するか争いだして、また俺はきょとんとした。
「竜のムッツリ!僕が先だよ、よろしくね、あゆ」
結局、語尾にハートがつく勢いで、リンが笑顔で握手してきた。
しかも、両手で。
「あのさ、さっきのこねこちゃんって…?」
リンが手を握ったまま離さないので、仕方なくそのままたずねてみた。
「あ、それね。その噂で持ちきりなんだよ。外部生の双子は、すごくかわいくって、うちのクラスに来る子は小悪魔系仔猫ちゃんだって」
「はい?」
俺は自分の耳を疑った。どこをどうやったら、俺が小悪魔で、さらに仔猫ちゃんなわけ?
「だって、生徒会長のお目つきでしょー。いくらかわいくてもいままでそこまでたらしこむ子いなかったもん。でもやっぱりこうして目の前にしてみると、かわいいよねー」
リンがうっとりと俺を見つめる。
思いもよらぬ展開に、俺はどうしていいのかわからず固まった。
「えっと、それ、おもっきり誤解だよ」
「え?どうして?こんなにかわいいのに」
リンが手を握ったまま、俺の顔を色っぽい目つきで覗き込むから、人見知りをしない俺でもさすがにたじたじになった。
「もう、リン、いい加減やめなよ」
そこへもう一人、ちっこい髪が肩くらいまである奴がやってきて、やっと俺の手からリンを引き離してくれた。
「ごめんね、もっと早く声かけようと思ったんだけど、ちょっと様子みてたんだ」
「あ、うん」
やっとまともそうな奴が現れて、俺もほっとした。
「僕、畠中実。だけどほんと近くで見るとかわいいよねー」
…と思ったのに、そいつもまた俺の顔をじーっと見つめだした。
「あのさぁ、さっきからかわいいかわいいって言ってるけど、俺ってどっちかというとかっこいい系だと思うんだけどっ」
あんまりにもペースが乱されっぱなしだったので、思わずそう言ってしまった。
そしたら、リンと実が顔を見合わせて、相変わらず竜はじーっと俺の顔を見つめた。
「…なに?」
その反応にどう対処していいのかわからなくて、俺は眉間に皺を寄せて、おそるおそる聞いた。
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