4■球技大会☆双子スター誕生!? SIDE:歩(了)

3/12

217人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
 薔薇とランチ 寮に戻る途中、ポケットの中で携帯がなった。 ノンからのメールで、今日こそみんなで温室でランチするから絶対来て、とのこと。 オレは竜と別れて、温室に向かった。 たくさんの花に迎えられるように、温室に入ると薔薇がたくさん咲いていた。 つる薔薇が巻きついたアーチをくぐっていくと、ノンと珠希が楽しそうに話ていた。 「あ、あゆ。遅かったね。空也先輩は?」 「なんか学級委員とかにさせられちゃってさー。空也?知らない」 「学級委員…空也の仕業だね」  珠希がふふっと笑って言った。 「何それ」 「会議、一緒だったんじゃないの?」 「あ、そうそう。迎えにきてくれたんだよね」 「え?じゃあなんで一緒に戻ってこないの?」 「ん?腹減ったから…別に一緒に帰ろうとか言ってたわけじゃないし」 「ひどいよーそれ、あゆ」 「えーなんで?」  別に約束したわけじゃないし。 「まぁ空也なら大丈夫だよさぁ歩くん、お茶どうぞ」 「わーい、いただきます」  きらきらと光が差し込む中、薔薇のにおいに囲まれながらお茶を飲んでいるとすごく気持ちよくなってきた。 「オレも温室で育つかなー」 「歩くんもっと大きくなりたいの?」 「うん。背ももちろんだけど肩幅とかさー」  ぽかぽかと、三人で談笑していると、空也が到着した。 「歩ー、ひどいな。先帰るなんて」 「えー? ごめん。だって一緒に帰るとか言ってないじゃん」  まーそーだけどーとすねる空也はさっきの会議の時とは別人。 「お、頭あったかいな」  空也がオレの髪を撫でた。 「オレ、育つんだよー温室で」 「またそんなかわいいこと言っちゃって。そのままでいいよ、歩も希も」  そう言って空也はオレとノンの頭をわしわしと両手で撫でて、椅子に座った。  なんか、最初ここ来た時はこんな広くて父さんも母さんもいないなんてって思って嫌だったけど、こうやってぽかぽかとみんなで平和にお茶してると楽しいなぁ。  オレよりノンの方がこういう時ってしっかりしてるな、と感じると、オレも頑張らなきゃって思う。 「そうだ、五月に球技大会あるんだって。ノン卓球だろ?」 「そうだね。卓球がいいな」 「へぇ、ノンちゃん卓球うまいの?」 「ノン、すごいんだってばオレだって全然敵わないんだもん」 「だってあゆってだいたいどこ狙ってくるかすぐわかっちゃうんだもん」  ノンがくすくすと笑った。 「ちぇー。オレバスケでるもんねー」 「うん、あゆはバスケ部だったもんね」 「あ、オレもバスケ」  空也がオレの顔をみてにっと笑った。 「球技大会、学年関係ないからね。空也と歩くん、当たるかも」 「へへーん。驚くなよ」  オレは空也ににっと笑い返して言った。 「あゆ、女の子にもすごい人気だったもんね。試合の時他の学校の子達も見に来るくらい」 「へぇ、それは楽しみだ」  ノンの言葉に、空也が挑戦的な笑みを浮かべた。 「何?信じてねーの?」  オレはちょっとむっとして、空也を見た。 「そんなことは言ってない」  そう言ってはいるものの、なんだか空也の表情が腑に落ちなかった。 「なんだよー。じゃあ勝負しようぜ、どっちが優勝するか」 「いいよ。勝った方が負けたほうになんでも命令できるってことで」 「受けてたってやる」  ノンと珠希がすごいねー、楽しみだねーと話してる横で、オレ達はメラメラと闘志を燃やした。 「空也も大人げないねー」  珠希がくすくすと笑って空也に言った。 「オレ人に負けるの嫌いだから。何事も負け知らずだし」 その勝ち誇った笑みはその自信のせいか! オレ絶対負けねーもん。 空也が悔しがるとことか見てみたいし、勝ったら食堂でフルコースおごってもらおうっと。  薔薇園から戻ってきて、ノンが妙なこと言うもんだから、思い出しちゃった。 そうだ、オレ、空也とキスしたんだっけ。 「でもさ、空也、一回目は寝ぼけてて、二回目は酔ってたんだよ。誰かと間違えたのかなぁ」 「え?間違えた…?」 「あーほんっとやなこと思い出しちゃったー」 「ごめんね、でも…」 「何?」 ノンが何か言いにくそうな顔をして俯く。 「…ううん、空也先輩ってモテそうだよね」 ノンが言いたいことは多分それじゃなかった。 長い付き合いだからノンが何か隠してる時の癖は目の動きでわかる。 「モテそうかー?まぁそう  かもしれないけど、オレ  の方がかっこいいもん」 「そうだね」 やっと、ノンが笑ったのでオレは安心して、深くは聞かないことにした。 多分重要なことならそのうち話してくれるだろう。 「…でもね、あんまり…あゆ、空也先輩に近づかない方がいいと思う…」 「へ?何?ノンってばやきもちー?かーわいい」 「もうー、違うよー」 どうしたんだろう、ノン。 まぁ、確かに弟がいきなりキスさてた相手なんて、近づいて欲しくはないよな。 どうせ当分はオレ、バスケの練習に忙しいし、空也と会うこともないと思うから大丈夫だけどね。  …まぁ、お菓子はくれるけど…。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加