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「ってわけでー、球技大会の割り当てこれで決定な後は其々練習あるのみ!」
オレと竜は希望通りバスケ、リンがテニスで実はソフトボール。
「バスケでる奴、放課後第二体育館集合なー。補欠とか決めるから」
「あーん、僕もバスケにすればよかったぁ。補欠になってあゆの活躍見れたのに。タンクトップにハーフパンツのあゆ…」
そう言って、リンがうっとりと見つめる。
「やめろよー。リン、テニスうまいらしいじゃん」
「すごいよ、リンは。性格がにじみ出てる。僕は怖くて絶対リンとは試合したくないな」
「おだまり」
楽しみだなぁ。なんとしても空也に…あ。そういえば。
「なぁ実?昨日ノンに何か言ったか?空也のこと」
「え?一緒に委員会行ったってこと?」
「いや、そうじゃなくて、何かノンが気にしそうなこと…」
「紫堂先輩…?あ、つまみ食いかな?」
「つまみ食い!?」
ん?
飯のこと?
なんでノンがそんなこと気にするんだ?
「あー紫堂先輩ね、モテるけど特定の相手は作らずちょいちょい手はだしてるって話。あゆも気をつけたほうがいいよー」
ん? 手を出す?
…むっ。
「竜、バスケ、絶対優勝するぞ!」
「ん」
なんだよ、それ、誰にでもああいうことするのかよ。オレのこと友達だとか言っといて…。それを聞いてノンが心配してくれてたんだ。
くそ、空也ってやっぱ、やな奴!
放課後、オレらが練習する第二体育館に行く途中、第一の方でざわざわと人だかりができているのが見えた。
第一はどこが練習してるんだろう。
人ごみを掻き分けて中の様子を見ることにした。
ひょうっとしてものすごい強敵出現?
声援を送られている主は、金色の髪をなびかせて、多くのディフェンスを突破してダンクシュートを決める空也。
その後もスリーポイントシュートに、見事なインターセプト。
思わずオレは彼の姿を目で追ってしまった。
…何、あれ。
人ごみを掻き分け、第二体育館に駈け込む。
「みんな!早速練習するぞ
!負けられないからな」
軽く試合をして、得点を多く取ったやつからメンバーを選ぶことにした。
もちろん、オレが一番。二番目は竜だったけど、竜は自分で点数をいれるよりも的確にパスを出してくれて点数に繋げてくれた。
だけど、オレの熱意もむなしく、他の奴らはぼろぼろ。
汗かくの嫌だとか、熱くなるのはかっこわるいだとか。
…こんなんじゃ空也に勝てない。
練習が終わったあと、オレは一人で残ってシュートの練習をした。
スリーポイントならオレだって負けない。
でもダンクなんて、空也くらいの身長があればできるだろうけど、オレにはとても無理だ。
春休みの運動不足で体力が落ちたから、これから毎日筋トレとランニングしよっと。
ぽいっとボールをゴールに放り投げた時、体育館に拍手が響いた。
「ナイスシュート」
聞き覚えのある声。だけど今聞くとなんだかムカムカする。声の主を、きっと睨む。
「汗に濡れてる歩もセクシーでいいね」
空也がにっこり笑って近づいてくる。
「うるせー」
「もうその辺にして寮に戻って夕食食べにいかない?」
「やだよ。ライバルとは一緒に飯くわないもん」
「ノンちゃんも来るよ?」
「じゃあクラスの友達と食べる」
「何すねてんの?」
空也がオレの髪を撫でようと手をのばしたので、オレは思わず空也にボールを投げつけた。
「さわんなって!」
そう叫んで、更衣室に走って逃げた。
「うーん、何か姫のご機嫌を損ねたようだ…」
体育館に一人残された空也がぽつりと呟いた。
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