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「オレ、歩に何かしたかな
ぁ」
生徒会長である紫堂空也が珍しく、情けない顔をして親友であり、寮長でもある久慈珠希に尋ねた。
「んー、思い当たることが多過ぎてなんとも言えない」
珠希はいつでも穏やかに笑っているが、普段生徒会長としての顔を保っている空也が困っているなんてことは久しぶりで、どこか楽しんでいた。
「あゆが球技大会のことでクラスの交流を深める為にも当分の間はクラスメートと食事するからってごめんなさいメールはいってたけど」
「そっかー。手が寂しい」
いつもくしゃくしゃに撫でていた歩の頭のかわりに、希の頭をくしゃくしゃにする。
希は珠希にも頭をよく撫でられるので、今日は倍以上も髪がくしゃくしゃにされてちょっと困っていた。
*****
この学園に来てから間もないが、初めてVIP席ではない所で食事をするのはこんなに窮屈なものなのか。
「見られてる、超見られてるよ、歩くん」
普段とは違う視線の多さに、実がそわそわして歩に言った。
「あー。見世物じゃねえっての」
「紫堂先輩と破局って噂で持ちきりだよ。そのまま僕のものにならない?」
「はぁ?破局って…何もないっつーの。あーあ。後で走ってこようかな」
「危険だ」
「そうだよ、一人で夜出歩くなんて危ないよ」
…なんて不自由な学校なんだ。
「トレーニングルームがある。後でオレも行く」
「まじで?竜ー!」
喜ぶオレの頭を竜が撫でた。
あ、そういえばいつもオレの頭をぐしゃぐしゃにする奴がいない…。
そのことに気がついて、何か物足りないような気がした。
そして食後にトレーニングルームに竜と行き、今日のような生活を、球技大会まで続けた。
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