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球技大会スタート
「よっし!絶対優勝するぞ!ノン、後でなー」
リンが用意してくれたユニフォームを着て、勢いよく部屋を飛び出した。
いよいよ球技大会一日目。
あの後、朝練をしていたオレと竜の元に、ばらばらとみんなやってきた。
最初はなんだかぎこちなかったけど、オレが「やるからには絶対優勝しような!」ってみんなの顔を順番に見つめたら、急にみんなやる気になった。
なんか青春だよな~。
「今日から球技大会が開催されるわけだが、みんなくれぐれも怪我のないように。全種目総合で一位になったクラスには、例年通り賞品があるので、みんな張り切ってくれ」
空也の挨拶に、わーっとみんなから歓声が上がった。
賞品?
なんだろう。
バスケの今日のスケジュールはうちのクラスは午前に一試合、勝てば午後に一試合で学年のトップが決まる。
トーナメントはA~F組で勝ち進み、オレらFは二試合勝てば学年トップに輝くことになっている。
そして明日は準決勝、明後日最終日に決勝戦が行われる。
はっきり言って、チームのコンディションは上々。
練習を重ねるごとに増してきた連帯感でチームワークもすんばらしいのだ。
負ける気はしねーぜ。
「あゆーやっぱり似合う!そのユニフォーム」
リンがきゃっきゃと騒いでデジカメで写真を撮りまくる。
今日は午前と午後に一試合ずつなんだけど、ノンの試合見に行けるかなー。
「あれ?珠希ー」
体育館に向かう途中、珠希が前を歩いているのを見つけて駆け寄った。
「あ。歩くん」
「うっす。ねー珠希何でるんだっけ?」
「僕は色々やらなきゃいけないことがあるからでないんだ」
珠希がいつもより元気なさそうに見える。
きっと、忙しくて競技に出られないことが悔しいんだ。
「そっか。大変だね」
「はは。そんな顔しないで僕はみんなの試合見てる方が楽しいから」
そう言って、頭を撫でるのかと思ったけど、何故か珠希は手をひっこめた。
「ね、じゃあオレ絶対勝つからさ!珠希の分も!」
わけわかんないけど、そんなことしか言えなかった。
「ありがとう」
にこっと笑った珠希の顔は、やっぱりどこか力なく思えた。
「これから空也の試合見に行くんだけど、歩くんも一緒に行く?」
「おう、敵視察!」
ノンも見にくるかと思ってメールしたけど、ウォーミングアップしたいからごめんね、とメールが返ってきた。
空也はやっぱりすごかった。
全てのシュートがまるで吸い込まれるようにゴールに入っていった。
悔しいけど。
「空也はなんだってできるんだよ」
珠希が眩しそうに空也を見つめて言った。
オレは、なんとなく、いつも空也や珠希がするように、珠希の頭を撫でてみた。
そしたらくすっと珠希がオレをみて笑った。
なんだか、心の中がもやもやする。
「じゃ、オレ行ってくる」
珠希にそういって、コートの外にいるクラスメートのところに駆け寄った。
みんなで円陣を組んで、気合を入れる。
「絶対優勝するからな!」
その言葉に、みんなキラキラと目を合わせて笑いあった。
第一クウォーターで余裕のリード。
インターバルにちらっと観客席を見たら、ノンと空也と珠希が見ていた。
ノンが手を振ったので、オレも手を振ってにっと笑った。
チームのボルテージはあがりっぱなし。
結局第一試合はオレらの圧勝。
「やるねー」
汗を拭きながらノンの元へ行くと、空也がにっと笑って言った。
「まだまだ序の口」
「だな。オレの方がリードしてるもんな」
「次は絶対オレの方が点取ってやる!」
「あ、僕もそろそろ行かなきゃ」
この状況だと仕方ないけど、結局ノンの試合を珠希と空也と一緒に見ることになった。
ノンはやっぱりあっさりと勝利。
さすが。
安心してオレはみんなの所へ戻った。
「あゆ!危ない!!」
リンの声がして、後ろで何かが壊れる音がした。
振り向くと、植木鉢が落ちていた。
「おお、あっぶねー。気をつけろってのー」
そう言った瞬間、次は何か飛んできたので、反射的に避けた。
「誰だー。ホームランでも打ったのか?」
「え?あゆ、それって違うと思う…」
「何が?」
実が心配そうな顔をするので、オレはなんでなのかわからなくて、首をかしげた。
「明らかに狙われてない?
他に何かあった?」
「えー?あったかなぁ。そういえばやたら周りが騒がしい気もするけど、気のせいだろ?」
あり得ない、ドラマじゃあるまいし、と思って、実の肩をぽんぽん叩いて笑った。
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