5■萌える緑☆恋する季節? SIDE:希(了)

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 覆い被さるように珠希の顔が近付いてくる……。  唇に柔らかな感触。でも、それは今までと明らかに違っていた。  湿った柔らかい舌が僕の唇を刺激した。意味が分かった。だから、僕は口を少しだけ開いて、珠希を受け入れた。それでも、そこから先どうすればいいのか分からない。  珠希の舌が熱いのか冷たいのかすらよく分からなくって、ただ、僕の口の中を別の生き物みたいにゆっくりと動き回る。  少しの間、僕はただ珠希の動きにまかせて、じっとしていた。なんか、すごく気持ちいい。  途中で、鼻で息をする方法を学んで、呼吸が楽になった。  リラックスしてくると、さっき思った感覚よりも、もっとぞくぞくするような気持ちよさが込み上げてきた。  僕は、珠希の動きに合わせて自分の舌をゆっくりと動かしてみた。珠希の舌に、自分のを絡める。  やわらかくって、今まで食べたどんな食べ物とも違う。  珠希の手のひらが、僕の髪をくしゃっと握ったから、それでやり方が合ってるんだと思って安心した。  自分が気持ちいいように、珠希が気持ちよくなれるように、ただ、夢中だった。どんどん頭が真っ白に近付いて行く。  たまき、たまき。  ただ珠希のことだけで、頭がうめ尽くされて行く。  ようやく離れた時、お互いに少し息があがっていた。  珠希と目が合う。少し、潤んでいるみたいに見える。 「うあ……ちょっと、希のこと甘くみてた」  そう言って珠希はごろんと仰向けになると、自分の顔を手のひらで被う。 「へ?」 「すごい上手い。なんかショック」 「へ? うそ」  上手なんてことが、ある訳ない。だって、初めてだったんだもん。 「たまきぃ」  僕は珠希の手を掴んで離して、顔を覗き込んだ。 「僕。初めてだよ。上手だった?」 「初めて?」 「うん。でね、どうやったらいいのかわかんなくって、珠希のまねしてたの……じゃあ、珠希が上手ってことか、ね、そうだよね」  僕が真面目にそう言うと、珠希は突然ぶはっと笑いだした。  こんなに大笑いするとこ、初めて見た。 「やっぱ、最高。希かわいい」  そう言って僕の背中に腕を回すと、自分の方へ引き寄せる。  僕は、ためらうことなく、そこへ自分の体を預けた。  なんか、安心する。 「優秀な生徒で、先生教えがいがあるな」  珠希が真剣な声でそう言うから、今度は僕が爆笑する番だった。 *** 「おはよ、希」  柔らかく髪を撫でられる感触で、気持ちよく目が覚めた。 「珠希、おはよ」  目を開くと、珠希がベッドに腰掛けて、僕を見下ろしている。 「これから、寮の仕事があるんだ。僕は少ししたら出るけど、もうちょっと寝てる?」 「ううん、起きる」 「じゃ、一緒に朝ごはん食べよう」  そう言われてダイニングに行ってみると、メープルシロップとバターのたっぷりかかったホットケーキが湯気をたてていた。 「うあ、おいしそう。珠希が作ったの?」 「うん、そう」 「食べていい?」 「うん、いっぱいあるよ。ほんっと、おいしそうに食べてくれるから、見てる方が幸せになる」 「そう? 僕の方が絶対に幸せだと思うな」  そう言って笑うと、珠希はまたあのくしゃくしゃの顔で笑ってくれた。  部屋に戻ると、まだアユは戻っていなかった。  ちゃんと言おう。アユに珠希とつきあい始めたって。  だって、ほんとはもっと前にアユに話したかったのに、結局好きになったことだって言いそびれちゃったし。  ソファに座って考えを巡らせていると、アユが帰って来た。  汗だくで。 「あのさ、僕……珠希と付き合うことになったんだ…あゆにはちゃんと言わなきゃって思って…」  ソファでアユの隣に座って、僕はやっと心を決めてそう告げた。 「へ、へぇ。おお、すげーな。あはは」  でも、僕が想像していたのとは違う答えが返って来た。  へーーそっかーそっかー、とかまだ言いながら、アユは自分の部屋に行ってしまった。  なんか……。  もっと、なにか言ってほしかったな、とか思うのは僕の我がまま?  それとも、やっぱり男と付き合うなんて言ったから、退いちゃったのかな。  そうだ。きっと。  ぼくは少しでも分かってもらいたくて話をしようと、アユの部屋に向かった。ドアが開いてる。 「あああ!○□×※…!!」  突然アユが大声で叫んだ 「アユ!大丈夫!? 」 「ぎゃあ! ノン! 」  僕が声をかけると、アユは飛び上がりそうになった。  やっぱ、変だ。 「あ、いや、なんでもない。あはははは」  またアユは意味もなく笑いだして。  もう……アユ。  どうしたんだろう。
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