5■萌える緑☆恋する季節? SIDE:希(了)

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「さすがにちょっと、緊張した」  理事長室を出ると、珠希がふうっと息を吐いた。 「珠希でも緊張することなんてあるんだ?」 「あるよ、もちろん。まだ心臓、ばくばくいってる」  そう言って珠希は笑う。  珠希がさっき言ったことを、もう一度思い出してみた。 「珠希。ああいうふうに言ってくれて、嬉しかった」 「その場しのぎじゃないから。あの人にそんなの通用しないし。本心だから」  そう言って珠希は僕の手を握って歩き出した。  今、キスしたいな。  そう思ったけど、そんなことやっぱり言えない。それに学校の中だし。  そしたら、急に珠希につないでる手を引っ張られた。  ちゅ、っと手の甲に柔らかいキス。  僕が驚いて見上げると、珠希がにっこり笑っていた。 「希。さっき言おうと思ってたんだけど」  エレベーターホールの近くで、珠希が立ち止まった。 「うん」 「悪い噂だったら、僕も嫌だけど。僕らが付き合ってるのって、悪いことじゃないよね?」 「うん」 「じゃあ、僕は別にみんなに噂されても。いいよ。希かわいいから心配だし。僕のだってみんなに知れた方が、むしろ好都合」 「珠希ぃ?」  僕はびっくりしたけど、珠希はいたずらっぽく目を輝かせていた。 「どう?」  僕の顔をのぞき込む。  考えてみた。  そっか……珠希が僕のことを好きだって、みんなに知れるんだ。  今までに受けた嫌がらせを思い出した。中傷のメモを思い出した。 「悪く、ないかも」 「ね?」  珠希はつないでるのと反対の手で僕の頬に触れる。  それから、僕の唇にキスをした。触れるだけでもなくって、昨日したキスとも違う。  ちゅ、ちゅ、とついばむように唇を合わせるキス。  それでも、僕の頭はぽうっとなった。 「危ない、学校だってこと忘れそうだった」  耳もとで少しかすれた珠希の声がして、現実に引き戻された。  それから頬にキスする。 「さ、授業が始まるよ」  そう言って珠希は微笑んだ。
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