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ばたん、っとドアが鳴って僕は目を覚ました。ソファに座ってテレビを見ながらいつのまにか眠っていたみたい。
入り口の方から、小さな声で話す声とか、くすくす笑いが聞こえてくる。
アユ?
まだ眠い目をこすりながら、不思議に思っていると、リビングにアユが現れた。
「おかえり。アユ、誰かと一緒だった?」
僕がそう言うと、アユは目を泳がせて、どうしてか真っ赤になった。
「あ、うん。空也んとこ行ってた」
「そか。なんか、いつの間にか寝てた」
「なあノン。俺、いろいろ考えてて……んで。なんノンの言うことちゃんと聞いてなかった。で、あのさ……とにかく、おめでと! よかったな!」
アユは突然つかつかと僕のとこまで歩いてくると、部屋に響き渡る声でそう言った。
「え?」
「だからっ、珠希とのこと。ほら、球技大会とかで忙しかったし、俺あんま話ちゃんと聞いてなくて。だから、ごめんっ」
アユはそう言って謝ったけど、僕はもうそれで十分だった。アユがおめでとうって言ってくれただけで。
「アユ……」
「なーにーぃ希、なんて顔してんの?」
アユはそう言って笑う。
「でも、だって。なんか、僕。不安だったんだもん。珠希とのことやっぱりほんとはアユ嫌なのかな、とか。いろいろ考えてて」
なんか、泣きそう。
「ノンー。もう、ほんっとかわいいんだから。俺が、ノンのこと嫌とか思う訳ないじゃん。な?」
アユは僕の肩に腕を回しながらそう言って笑う。
それは、そう分かってたけど。
「だって、アユずっと変だったもん。僕の顔見てくれないし、珠希のことも……」
「それは、ああ、それは、まあいろいろあって。な? とにかく俺すっげえ嬉しいから。ノンに好きな奴ができて。んで、今幸せなんだろ?」
「うん」
「それで十分だよ。な?」
アユはそう言って笑う。
なんか、太陽みたいに笑うアユの顔。久しぶりに見た気がする。
「変だって、思ってない?」
「思うかよ。大好きだぞ。ノンのことも、珠希のことも。あ、もしノンのこと泣かせたりしたら、珠希のことは嫌いになるかもだけど?」
そう言って笑う。なんだか、伯父さんのことをちょっと思い出した。
「アユーーー、僕もアユのこと大好き!」
そう言って僕は鼻水をずびずび言わせながらアユに抱き着いた。
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