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「おはよーあゆぅ」
教室について、いきなり一番顔を合わせづらい人の一人、リンに声をかけられた。
「お、おおおおはよ」
「あれ?顔が真っ赤だよ、体調悪いの?」
「いえいえ、滅相もない! 」
リンの顔を見た途端、また頭の中でリンの喘ぎ声がエンドレスにこだました。
「ほんと、大丈夫? ねぇ、竜」
「ああ」
あ、そうだ、竜はオレの席の隣じゃんか。
自分の席に戻ると、リンは後をついてきて、隣の席には竜がいて、結局二人がそろうことになった。
「あ、おはよー、歩。なんかすごい噂じゃん? 」
「え? 何が? 」
「紫堂先輩と久慈先輩が親衛隊をボコボコにしたって」
「は? してないよ。注意してくれただけ」
「そうなんだー。やっぱ噂は噂なんだね」
心なしか、実が残念そうに言ったけど、オレは今それどころではなかった。
「…なぁ、リンと竜って、付き合ってんの? 」
オレの発言に、三人がぱちくりと目を合わせた。
「あ、歩は高等部からだから知らないのか。この二人は中等部からいちゃつきまくりだって有名だよ」
「まぁね、付き合ってるけど、でもあゆが僕と付き合いたいって言うなら、別れちゃう」
「オレも」
「二人とも、冗談はやめろよー。好き同士なの? 」
「うん」
二人が声を合わせて頷いた。
あ、そうなんだ。そっか。
なんだか、その反応に安心した。
「えへへ、そっか。いいなぁ」
よくわかんないけど、ちょっと嬉しくなって、笑えてきた。
まぁ、いきなりあれは衝撃だったけど、好き同士ってのはいいな、なんか。
そういえば、ちゃんと聞いてあげれなかったけど、ノンと珠希もそうなんだよな。
なんか悪いことしちゃったな。ランチの時に会ったらおめでとうって言おう。
それから、何故か休み時間の度にみんなにオレと空也のことを聞かれた。
「やっぱ紫堂先輩ってうまいの? お似合いのカップルだよな」
そういうこと言われる度に否定したんだけど、空也とセックスとか…。
動揺していると、入り口が騒がしくなり、ひょいっと空也が現れてオレの名前を呼んだ。
あんまりにも周りがオレ達のこと誤解しているから、ついオレも意識してしまって、やっぱりまともに空也の顔が見れなかった。
空也が隣に座っていると意識してしまって、ノンに付き合ったことについて聞けなかった。
隣で空也が少しでも動いたり、笑ったり、声が聞こえると、心臓がばくばくいって、誤魔化すように、ひたすらもきゅもきゅと食べつづけた。
食べることに集中しすぎて気づかなかったけど、何故かノンと珠希が叔父さんに呼ばれたらしい。
ノンに一緒に行く?と聞かれたけど、まだサラダが半分くらい残っていたので食べつづけることにした。
二人が出ていって空也と二人っきりなことに気づいた。
意識してると気づかれたくなかったので、やっぱりオレはひたすら食べつづけた。
「歩」
「え? 」
空也に呼ばれて、顔をむけると、手を伸ばしてオレの口元についたドレッシングを指で拭うと、ぺろっと舐めた。
舐めるか、普通!
「ついてた」
オレの動揺とは裏腹に、当然のようににっこり笑う空也に、やっぱりオレは意識しすぎなのか、と落ち着こうとした。
「ありがと」
またサラダに顔を向けようとすると、空也が再び名前を呼んだ。
「好きだ」
「あ、オレも好き」
そっか、意識しすぎて、嫌ってるとか思われたらどうしようと思ってたけど、大丈夫なんだ。
ん?
空也は友達として好きだと言ってるんだろう、オレは…。
いや、ありえない。なんで?
「ま、想定範囲内だけどな」
なんだかすっきりしないオレに、空也は優しく笑って、頭を撫でた。
好きって、どういう好き?空也はオレとセックスしたいって思うの?
そう聞いてみたかったけど、まさか口に出すわけにもいかず、考えていると予鈴がなった。
「途中まで一緒に行こう」
「うん、おんぶしてよ。空也の視界ってきもちい」
「いいよ」
いいよなぁ、細いのにきれいについた筋肉。オレも今はまだ中学からあがったばっかだけど、三年になったらこんな風になれるかな。
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