6■萌える緑☆恋する季節? SIDE:歩(了)

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「おはよーあゆぅ」  教室について、いきなり一番顔を合わせづらい人の一人、リンに声をかけられた。 「お、おおおおはよ」 「あれ?顔が真っ赤だよ、体調悪いの?」 「いえいえ、滅相もない! 」  リンの顔を見た途端、また頭の中でリンの喘ぎ声がエンドレスにこだました。 「ほんと、大丈夫? ねぇ、竜」 「ああ」  あ、そうだ、竜はオレの席の隣じゃんか。  自分の席に戻ると、リンは後をついてきて、隣の席には竜がいて、結局二人がそろうことになった。 「あ、おはよー、歩。なんかすごい噂じゃん? 」 「え? 何が? 」 「紫堂先輩と久慈先輩が親衛隊をボコボコにしたって」 「は? してないよ。注意してくれただけ」 「そうなんだー。やっぱ噂は噂なんだね」  心なしか、実が残念そうに言ったけど、オレは今それどころではなかった。 「…なぁ、リンと竜って、付き合ってんの? 」  オレの発言に、三人がぱちくりと目を合わせた。 「あ、歩は高等部からだから知らないのか。この二人は中等部からいちゃつきまくりだって有名だよ」 「まぁね、付き合ってるけど、でもあゆが僕と付き合いたいって言うなら、別れちゃう」 「オレも」 「二人とも、冗談はやめろよー。好き同士なの? 」 「うん」  二人が声を合わせて頷いた。  あ、そうなんだ。そっか。  なんだか、その反応に安心した。 「えへへ、そっか。いいなぁ」  よくわかんないけど、ちょっと嬉しくなって、笑えてきた。  まぁ、いきなりあれは衝撃だったけど、好き同士ってのはいいな、なんか。  そういえば、ちゃんと聞いてあげれなかったけど、ノンと珠希もそうなんだよな。  なんか悪いことしちゃったな。ランチの時に会ったらおめでとうって言おう。  それから、何故か休み時間の度にみんなにオレと空也のことを聞かれた。 「やっぱ紫堂先輩ってうまいの? お似合いのカップルだよな」  そういうこと言われる度に否定したんだけど、空也とセックスとか…。 動揺していると、入り口が騒がしくなり、ひょいっと空也が現れてオレの名前を呼んだ。  あんまりにも周りがオレ達のこと誤解しているから、ついオレも意識してしまって、やっぱりまともに空也の顔が見れなかった。  空也が隣に座っていると意識してしまって、ノンに付き合ったことについて聞けなかった。  隣で空也が少しでも動いたり、笑ったり、声が聞こえると、心臓がばくばくいって、誤魔化すように、ひたすらもきゅもきゅと食べつづけた。  食べることに集中しすぎて気づかなかったけど、何故かノンと珠希が叔父さんに呼ばれたらしい。  ノンに一緒に行く?と聞かれたけど、まだサラダが半分くらい残っていたので食べつづけることにした。  二人が出ていって空也と二人っきりなことに気づいた。  意識してると気づかれたくなかったので、やっぱりオレはひたすら食べつづけた。 「歩」 「え? 」  空也に呼ばれて、顔をむけると、手を伸ばしてオレの口元についたドレッシングを指で拭うと、ぺろっと舐めた。  舐めるか、普通! 「ついてた」  オレの動揺とは裏腹に、当然のようににっこり笑う空也に、やっぱりオレは意識しすぎなのか、と落ち着こうとした。 「ありがと」  またサラダに顔を向けようとすると、空也が再び名前を呼んだ。 「好きだ」 「あ、オレも好き」  そっか、意識しすぎて、嫌ってるとか思われたらどうしようと思ってたけど、大丈夫なんだ。  ん?  空也は友達として好きだと言ってるんだろう、オレは…。  いや、ありえない。なんで? 「ま、想定範囲内だけどな」  なんだかすっきりしないオレに、空也は優しく笑って、頭を撫でた。  好きって、どういう好き?空也はオレとセックスしたいって思うの?  そう聞いてみたかったけど、まさか口に出すわけにもいかず、考えていると予鈴がなった。 「途中まで一緒に行こう」 「うん、おんぶしてよ。空也の視界ってきもちい」 「いいよ」  いいよなぁ、細いのにきれいについた筋肉。オレも今はまだ中学からあがったばっかだけど、三年になったらこんな風になれるかな。
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