1■学園生活スタート☆ぼくたち山田兄弟 SIDE:希(了)

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 ペガサスルーム 「はぁ、なんで急に走るの?」  言われた通り、おっきな扉を開けて入った後、やっとアユは止まってくれた。 「だって、あいつ金髪の悪魔と同じ匂いした! なんかノンのこと嫌な目つきで見てた」  ???  今僕らに双子の魔法は効かないらしい。双子は以心伝心するっていうけど、今アユがなにを言ってるのか、僕にはさっぱり理解できなかった。 「ま、いいや。さ、行こう」  アユは、ぽかんとしてる僕を呆れ顔で見て、また歩き始めた。 「なにこれ!?」  オートロックのプレートの前で、僕らはまたもや目を疑った。装飾過多な金色のプレートに動物の形のレリーフが彫り込まれたボタンが並んでいる。 「RPG!」  またアユが大声で嬉しい悲鳴を挙げるのを、必死で黙らせて、僕は珠希先輩に聞いたペガサスのボタンを押した。 「珠希はペガサスの部屋に住んでんのか」  アユが笑い混じりの声で言う。  しばらくすると、先輩の声が聞こえてきた。 『はい』 「あの、珠希先輩ですか? 山田です」 『山田、ああ、のんちゃんと歩くんだね。今降ろすよ』  そう言われて僕らは顔を見合わせた。降ろす?  でも、その疑問は一分もしないうちに目の前で開いた。  オートロックの扉だと思っていたのは、エレベーターで、部屋のインターホンから操作できるらしい。 「ほんっと、無駄に金かかってんなー、すげー伯父さん」  アユは面白がるようにそう言って笑った。  1階分だから、あっという間にまたエレベーターが開いた。  それに、アユが言ったとおり、ドアにもおおきなペガサスのレリーフが付いていたから、僕らはすぐに部屋を見つけることが出来た。 「ペガサスルーム!」 「シッ、アユ声が大きい」  そう言ったのと同時に部屋のドアが開いて、珠希先輩があのくしゃくしゃの笑顔で立っていた。 「いらっしゃい。さ、入って」 「おじゃましまー、うあッ、すげっ、なにこの部屋!」  確かに、アユが驚くのも無理はなくって。なんていうか、僕らの部屋だって十分凄かったのに、それが3つくらい入りそうな広さ。それに、天窓とかも付いてるし。 「ペガサスルーム、って感じでしょ? 僕もはじめここに住めって言われた時、びっくりしたからね」  僕が先輩に促されたソファに座っても、まだアユはふらふらと窓から外を見たりしている。 「もうアユ、はやくこっち来て」 「んー」  生返事。 「あ、の、珠希先輩。すみません」 「いいよ。好きなだけ見れば」  珠希先輩は優しく笑ってくれる。 「でもそれはだめ」 「へ?」 「珠希って呼んでって言ったのに。ほら、言ってみて?」  先輩はテーブルを挟んだ反対側から優しい口調でそう言ったけど、僕がそう言わないと許してくれなさそうな雰囲気で……。 「……たまき」 「上出来」  そう言って笑うと、また頭をくしゃっと撫でられた。 「あーーもう腹減ったよう、珠希、寮の説明って時間かかる?」  我がままなアユは、いきなり先輩にそんなことを言った。 「もうッアユッ」  きっと、先輩わざわざ僕らのために時間空けてくれてたのに。 「いいよ、のんちゃん。じゃあさ、一緒に御飯食べに降りようか。食べながら説明するよ」 「いいんですか?」 「それ最高!」  僕らの声が重なった。  珠希先輩はくしゃくしゃの笑顔をもっとくしゃくしゃにして、声を挙げて笑った。
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