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Truthー心は揺れるー
夜中に突然、携帯電話が鳴り響く。真っ暗な部屋の中で、ディスプレイが光り出し、けたたましい音を立てる。
いったいこんな夜中に誰だろう、と僕は思いながら、携帯電話を手に取る。ディスプレイを確認すると、綾香の名前が表示されている。僕は通話ボタンを押して電話に出た。
「もしもし」
「もしもし。こんな夜中にどうしたの?」
「瞳が死んだんだって」
「こんな夜中に、ずいぶん悪い冗談だな」
僕はため息を吐いた。綾香は暇になると、よくこうして時間も構わず、僕に電話をかけてくる。たいていは、他愛もない悪戯電話だ。だけど、今日の電話はあまりにも質が悪い。僕は少しムッとしていた。ただでさえ安眠を妨害された上に、心寄せる女性が死んだなんて嘘を吐かれては、たまったもんじゃない。
「嘘じゃないのよ」
綾香は言った。だけど、ずいぶん落ち着き払った様子だ。その様子からしても、嘘だとはっきりわかる。本当に瞳が死んだのなら、綾香はもっと慌てているはずだ。
「悪いけど、質の悪い冗談は別の日にしてくれないか? 今日は本当に疲れてるんだ。残業で、日付が変わる直前まで働いてたんだ。ようやくさっき、眠りに就いたところなんだよ」
僕はそう言って、電話を耳から離した。さっさと電話を切って寝てしまいたいというのが僕の本音だった。
「嘘じゃないのよ!!」
綾香の大きな声が、手元の携帯電話から飛び出してくる。だけど、さすがに僕も我慢の限界だった。
僕はどちらかというと気の長い方だ。滅多に怒ることはない。だから、綾香もこうして暇潰しに僕に悪戯電話をかけてくる。だけど、今日は本当に疲れているし、何より、上司と喧嘩したことで自分でもわかるくらい機嫌も悪い。とても綾香の悪戯電話に付き合っていられるようなきぶんじゃなかった。
「悪いけど、これ以上そんなこと言ったら、本気で怒るぞ!!」
僕は少し大きめの声で、ガツンと綾香に言った。だけど、綾香はそれでも一歩も退かない。
「だから、嘘じゃないってば。さっき、瞳のお母さんから電話があったの。交通事故だって。病院に運ばれたけど、ダメだったって」
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