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(三)
(三)
学校を出て屋上庭園に直行した。そのまま帰宅すれば、昼食をとったあと、ベッドの誘惑に勝てない恐れがあったから。
PCを起動し、ワープロソフトを開いた。
と、
「で、いったいなんの用なのよ?」
それは不意に、ごく間近から聞こえた。
ん……?
モニターからあげた視線は、意図せず前方の一点で凝固した。
目の前に真っ白な女が座っていた。……いや、そんな表現ではまるで幽霊かお化けだ。
正しくは、透き通るような白い肌をした女性が、目の前に座っていた。
真っ白な女というイメージは、肌の色に加え、彼女が身につけている純白の服からもきていた。
この位置からは、テーブルから上の上半身しか見えないが、それでも彼女を包んでいる衣装が、昔流行ったらしいボディコンだということは察知できた。
引き締まった彼女の輪郭の中には、切れ長の目と高い鼻梁、そして艶やかな薄い唇が、これ以上ないほどの絶妙なバランスをもって配置されており、そんな極度の美しさが、ぼくを金縛りに遭わせていた。
「どうしたのよ? 目開けて口半開きにしたまま死んだの?」
めんどくさそうなその声で、自失から覚めた。
「はっ……」
「はっ、じゃないわよ。こっちは忙しいんだから、早くいいなさいよ」
見くだした顔のまま、彼女は腕を組んだ。圧迫された両胸の間に深い谷間ができた。
「あの、誰かとお間違えでは……」
恐る恐る尋ねた。
世の中には自分と瓜二つの人間が、ほかにふたりいると聞く。ぼくのようなどこにでもいる平凡な高校生だったら、もっといてもおかしくはないかも。
「間違うわけないでしょ。あんたみたいな暗くて貧相で、頭の悪そうなガキ」
平然と答えた彼女の年齢は、自分とそう変わらないようにも見える。
「じゃあ、どこかでお逢いしました?」
初対面でいきなりそんな悪態をつかれ、間違ってはいずともちょっとムッとしたぼくは、多少語気を強めてみた。ものの……、
どこかで見たことがあるような……。
脳のごく片隅で、そんな矛盾した思いもチラッと顔を覗かせて……。
でもそれはおそらく、並外れた美顔が、テレビや映画で見る女優かモデルなんかと重なっただけなのだろう。
「しょっちゅう顔見せにきてんじゃないの」
「へ?」
「そこに」
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