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この待遇は、本校の長い歴史の中で、我がクラブが小説界においての優秀な人材を少なくない数輩出している、という功績からきているのだろう。
作品の優秀さは、ぼくらの著作を発表する場である、部誌『四子玉草紙』の読者からの評価で決定され、その評定はポイントという形で視覚化される。
年四回刊行される『四子玉草紙』は、そのつど、図書室内、職員室前、昇降口に置かれる。
巻末にはアンケート用紙が挟み込まれており、そこには部誌に対する意見のほか、気に入った作品のタイトルを記してもらう欄(記入されたタイトルには、すべてに一ポイントずつが付与されることになっている)、また、読後感を書いてもらうスペースがしっかり設えてある。そしてアンケート回収後、まとめられた読後感のプリントとともに、各自の獲得ポイント数が明記された一覧表を部員は受けとることになる。パスをした者以外、みんなが一番緊張するときである。
アンケート用紙は毎度、はけた部誌とほぼ同数が、図書室の片隅に置かれているアンケート箱に返ってくる。これはなぜか、国政選挙などで使われるジュラルミン製の投票箱だ。
本校を投票所として提供していたその昔、スペアとして持ってこられたものが用具置き場にそのまま忘れられ、それを以前の部員がもらってきたらしい。
アンケート回収にしては物々しいこの箱の鍵は、顧問が預かっている。だから部員が彼女の許可なしに箱を開けて中を改める、ということはできない。
また、図書室内に設置されている防犯カメラは、箱のある位置をしっかりカバーしているので、アンケートを書いてはいけない決まりになっている部員がこそっと投函したとしても、誰かからの目撃証言があれば、映像検分によってその不正はすぐ判明する。
ただ、目撃されなければ不正は成功するかもしれないが、万が一ばれたときは、一発で強制退部の憂き目に会う。なので、そんなリスクを犯そうとする者はまずいないだろう。
戻ってきたアンケート用紙はありがたいことに、にぎやかしで、などというものは毎度見あたらず、コンスタントに結構な数があった。結果、公正な批評を受けられたと考えてよかった。
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