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ゆえに、今まで一番ポイントを獲得しているのが浦和、次点が副部長の千祭、ということになる。すべて計算したわけではないが、ふたりの差はそう離れていなかったように思う。その僅差も、彼女の憤慨要因の一端を担っているのだろう。
また評価には、さまざまなコンテストの入賞歴も考慮されるが、こちらに関しては断然浦和に軍配があがる。なにしろ毎年、全国高等学校文芸コンクールに入賞しているのだから。
一方、ぼくはというと……。
部誌には提出された作品すべてが載る。が、掲載順は、前作で獲得したポイント数で決まってくる。一番多い者がトップを飾り、二位の者三位の者と続いていくのだが、真ん中以降からは、文字サイズが極めて小さくなるという区別がつけられる。
提出した作品は、毎回一ポイントしかもらえたことがなく、読後感も返ってきたことがないぼくは、その後半チームから抜けでたことはない。
しかし、だからといって腐っている場合ではない。文芸部推薦は、部長経験者のみならず、トータルポイントが高い者も受けるチャンスがあるのだ。だから推薦が決まるまでのあと残り三回の作品で、なんとか逆転満塁ホームランをかっ飛ばす!―――そんな意気込みで今回も臨んでいた。のだが……。
推敲の重要さを熱く語って顧問が会合を締めると、図書室内には途端ににぎやかさが戻った。
そんな中、ひとり帰り支度をしているぼくの耳に、
「羽厨子先輩!」
伊井益代の元気な声が飛び込んできた。
「今、四子玉文学館で開かれてるイベントなんですけど、あの~、一緒にいきませんか?」
横に立った彼女は、ぼくの顔を見あげていった。
「ああ、昭和の文豪展」
「はい。来週の金曜日までなんですけど、ご都合よい日ってありますか?」
「……」
「ない、ですか?」
探るような目。
「いや……そんなことは……」
「もしかして、もういかれちゃいました?」
クリクリっとした瞳が、動揺の色を見せた。
「え?……いや、そんなことは……」
「お忙しい、ですか?」
綺麗に整った眉が、少しさがった。
ええ~い、チクショ~!
「実は、今回の作品がまだ……」
「あ……そうなんですか……」
語勢をしぼませた彼女は、それでも気力を奮い立たすように、
「でも、金曜日までにはなんとか大丈夫なんじゃ?」
「うん! 大丈夫なようにする!」
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