春くるまでさよなら

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街灯のない凸凹とした道を歩くことに慣れきった足を宛てに、帰り道をゆく。空を覆う無数の星が途切れているところにはちょうど山が(そび)えていて、それを目印に進めばいい。 「そういえばお前。高校の時なんで彼氏いなかったんだ?」 流れゆく会話の川に、なんとなしに前々からの疑問という笹舟を浮かべてみた。 「それはつまり、ここまでの美女に彼氏がいなかったのが不思議でたまらないよーって解釈でいい?」 「そういうことでいいよ、うん」 認めたくはない。 認めたくはないが、ここまでの美女に…っていうのはあながち間違ってもいない。 原因があるとすれば、そのひねくれた性格か? しかし学校で明るいお姉さん的立場を確立していた彼女の周りにはいつも友達がいたし、「ドーナツさん」に惹かれる輩も少なくはなかったはずだ。 何度「一緒に帰れるよう仕向けてくれ」と頼まれたことか。お前らん家の方向、真反対のくせに。 しかし、彼女がこんな風に─── ワガママで自由奔放になるのは、実は蒼の前だけなのであったことに、長いこと一緒にいたわりに、二人ともまったく気づいてはいないのであった。 「それはねえ」
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