1人が本棚に入れています
本棚に追加
大学生活は充実した…というか、過密であった。
病に蝕まれる母の看病に加え、少しでも家計の足しにするべくバイト三昧の日々。ぐるぐると回る日常を過ごしていたら、いつのまにか4回生になっていた。
母の体調は悪化の一途を辿っていた。
そんな状態でもやはり母は俺が父に近づくことを願っていたし、俺もその願いに応えようとした。
「お母さん、◯◯に内定貰ったよ」
俺がそう告げると、母は涙した。
「あぁ、良かったね…あの企業なら将来も安泰よ…流石、お父さんの子だね…」
彼女はそう言い、俺の頬を優しく撫でた。
それから数日後だった。母が亡くなったのは。
母は最後まで「流石、私の子だね」とは言ってくれなかった。
それが、残念でならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!