父

語る

そう言って、悪友はウイスキーを片手に話した。
彼から父親の話を聞くのは初めてだ。そういえば、母親の話も聞いたことがないかもしれない。
何にせよ、彼は良くも悪くも、語らない人間だ。

そんな彼と何故こんなの話をしているかというと、もうすぐ父の日だからだ。
聞いたことがないな、と俺が言ったら少し酔った風に彼は話し出した。
きっと、世間の空気に流されたんだろう。
なんせ今年の父の日は、この国の国王様が第一王女様のお父上になってから50年の節目だからだ。
そこかしこで旗が掲げられ、町はいつもよりも活気に溢れている。

カッコつけだと言う彼に『あまりいい表現じゃないな』と言うと、少し笑ってウイスキーを飲み干して、頬を赤くしてから話し出した。