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斎藤芳彦宅付近に着いたのは22時を過ぎていた。他の二人と同じ様に、やはり高級とはお世辞にも言えないアパートに住んでいた。時折窓のカーテン越しに人の影がちらほら動くのが見える。間違い無く斎藤は今家に居る。そして生きている。が、山内が斎藤の家を訪ねる事は無かった。コインパーキングに車を停め、そこで息を潜める。
23時に動きがあった。部屋から若い男が一人出て来る。背の高いボサボサ頭の男は、眠そうにあくびをしながらポリポリと頭を掻いている。心なしか足元がフラフラしている様に見える。酔っ払っているのか?それともクスリか?が、そんな事は今の山内にはどうでも良かった。ただただ車の中で息を潜め、その様子を見守る。
30分程経過しただろうか。斎藤が戻ってきた。手にはコンビニの袋が下げられており、遠目から見ても、筒状の缶の様な形が確認出来、その上に袋状の物が何個か乗っていた。おおかた買ってきた酒とツマミといったところだろう。山内は引き続き車の中で息を潜める。
その次に動きが有ったのは、ちょうど日付が変わろうとする頃だった。遠くから一人の若い女が歩いて来るのが見えた。女はアパート名を確認すると、斎藤の住むアパートの敷地内に入った。それを確認すると山内は静かに車を出た。
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