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第19章 虚偽
「山内さん!」
新田が慌てて声をかける。
「これで・・・三人目ですよ。正気の沙汰とは思えない。」
「あ、あぁ。俺が到着した時にはもうこの状況だった・・・・・・。」
山内は咄嗟に偽った。何だか、頭がボーッとしてくる。
「完全に同一犯と見て間違いなさそうですね。何か・・・手掛かりは無いんでしょうか?」
山内は斎藤芳彦の遺体を見ながら呆然とする。新田が何か言った様だが、うまく耳に入って来ない。
「あの・・・山内さん・・・?山内さん?聞いてます?」
新田が山内の顔を覗き込む。
「あ、ああ。とにかく何でもいい。手掛かりになりそうな証拠を探してくれ。」
言ってはみたものの、おそらく無いだろう。麻美のあの自信がそれを物語っている。そして、手掛かりを見つけられても困る。そうなれば、無実の香澄を追い込む事になる。
「なあ、新田。お前、刑事を辞めたいと思った事はあるか?」
「なんですか?こんな時に。有りますよ。何回も有ります。」
新田が苦笑いをする。
「そうか。いや、ちょっと聞いてみたかっただけだ。すまん。」
「何なんですか?今日の山内さん何かおかしいですよ。元気も無いし。」
そっか。俺は今日初めて思ったよ。刑事を辞めたいってね。
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