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久しぶりの休暇だ。警察は日夜、連続不審死の犯人を躍起になって探している。犯人はもうこの世には居ないというのに。
今日は息子の1歳の誕生日だ。久しぶりに妻と息子と三人で写真を撮った。なかなか良い写真が撮れた。ささやかなバースディパーティーが終わり、風呂に入る。風呂から出ると、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、渇ききった喉に流し込む。ソファにどっかりと深く座り込む。ふと携帯電話を掴み、先程撮った写真を見返す。一瞬心臓が止まりそうになるくらいの衝撃を受けた。親子三人で撮った微笑ましい写真は、そこに、ある人物が加わる事によってイメージが180度ガラリと変わった。三人で撮ったはずの写真には、そこに居てはならない四人目が写り込んでいる。それが誰かはすぐにわかった。以前、棚田さん経由でこの携帯電話のフォトボックスに入り込んだ女だ。女は生気の無い青白い顔をして、斜め後ろから幸せそうな三人を恨めしそうに見ている。不自然に目だけがギラギラと不気味に輝いている。
山内は残りのビールを一気に飲み干した。風呂上がりの火照った体を冷たいビールが心地良く冷やしていく。
「おまじない・・・裏切ればタダじゃおかない・・・私はずっと見ている・・・か。」
山内はふーっと深く息を吐くと、逃れられない自分の運命を受け入れる事にした。今日も、明日も、明後日も、全ては闇の中へ・・・。
完
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