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夕べ降りだした雨は夜が明けても地面を叩き続けていた。昨晩よりも大粒になっているようにも思う。
これほどの雨が降っていれば誰もが学校や仕事に行くのが億劫に感じるであろう。
しかし、藍染 陽太にとっては違った。雨の音は父との思い出の音でもあり、心踊らすものであった。
陽太の父、弘和は陽太が中学生の頃に病気でなくなっている。弘和が死んでから15年が経つが、雨の音を聞くと父との思い出がよみがえってくるのであった。
弘和は自他共に認める雨男だった。陽太とどこかに出かける度に天気は雨。天気予報で本日は快晴だと言っていても雨が降る。それでも弘和はいつも満面の笑顔で「はっはっは!今日も父さんのお陰で雨が降ったぞ~!」と明るく振る舞っていた。
陽太も「また雨だ…、晴れてるときに遊びに行きたいな…」なんてことを言ってはいたが内心は雨が降っていても父と出掛けられるだけで嬉しかった。
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