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ナンバーワン売れっ子キャバ嬢が謎の失踪・・・これでもうナナに会えなくなった。東京にいてもしょうがないと思った北村は、気晴らしがてら岩手くんだりまでやって来た。実家のある花巻に帰省したのだ。
日本百名山の一つである早池峰山の白銀、それと東北地方最大の川である北上川の水鏡を眺めるだけでも心が洗われる思いがして東京とは比べ物にならない位、空気が澄んでいておいしい。
それに都会人とは比べ物にならない位、田舎の人は近所の人と良くも悪くも深く結びついているし、北村は少年青年の頃は道化によって人気を得ていたから彼が帰省したと知ると、仲間だった近所の者たちが次々に彼の実家を訪ねて来て彼と献酬して昔話で盛り上がったりする。しかし、自分の仕事の話になると、北村だけ盛り下がる。
彼は糊口をしのぐまるで売れない作家なのだ。そんな北村に対し随分と景気の良い奴がやって来た。名を高井と言って彼は小学中学高校時代、常に学級委員になるような優等生で一流大学を卒業して今は総合病院で医院長を務め大邸宅を構えている。
持ってきた大吟醸で北村と盃を酌み交わす高井は、何処か東北の北風のように冷たい鋭さがある。それでも酔いが進んで行くと、鈍くなった高井は北村が作家であることもあって郷土の誇りと言うべき宮沢賢治の話をし出した。
高井は調子に乗って頻りに宮沢賢治をリスペクトしていると言うが、没後、評価されたからリスペクトしているのであって本当に理解しているからリスペクトしているのでは決してない。そんなステレオタイプを持った者は高井に限らずざらにいる。彼のような者は猥談でもしていればいいのだと北村は思った。その内、彼らの女関係についての話に移って行った。
尚、筆者は岩手弁をほとんど知らないので会話は方言を無視して記す。
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