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あゆたちの島に来て、僕らはみんなで遊んでバーベキューをした。
ジュンと実は付き合ったらしく、二人で仲良く一緒にいる。
僕らの間では、雲の上の存在だった紫堂先輩、久慈先輩、春日先輩も一緒にいる。
みんな優しそうだったけど、紫堂先輩なんてその笑顔で人と一線を引いているような感じがしたのに。
目の前では肉ばっかり食べるあゆに、野菜を食べろとまるで父親みたいに世話を焼いているからびっくりした。
「みんな仲いいよねー」
「ん」
僕らはたくさん友達ができて、本当に嬉しかった。
「しっかし、リンって相変わらず、小悪魔っていうより、悪魔だよな」
ジュンが苦笑いして、僕に言った。
実ももうあいつのことなんて気にしてないみたいだった。
「ほんとはあいつ、気に食わなかった」
嫌がる僕の本名を口に出して、毎度のごとく蹴り飛ばされて今回はプールに落ちてずぶ濡れの竜が、突然喋った。
「何? 竜、やきもちぃ? 」
またちょっと飲み過ぎたのかな。
竜は酔うといつもより喋るようになる。
「リンがあいつを懲らしめるつもりだったのはわかってたけど、それでも目の前でいちゃつかれるのは嫌だ」
「もーう。竜飲み過ぎぃ? 」
珍しく喋る竜に、みんな気になったのか、視線が集まる。
紫堂先輩の膝の上でとろんと眠そうな目をしたあゆまで、こっちを見てる。
「いつものことでしょ? 」
僕は竜をなだめようと、手を伸ばした。
「それでも…ずっと我慢してきたけど、もう、我慢できない! 」
きっぱり言い放った竜をジュン達は唖然として見つめた。
「ごめん、僕ら先部屋もどるねー。竜酔っぱらっちゃったみたい~」
僕はジュンたちににっこりなんでもないように笑って言って、竜をひっぱって部屋に戻った。
「もーう、竜! みんな驚くでしょ、あんなとこで」
「だって、我慢できなかった。あいつオレの目の前でリンにべたべた触ってた」
僕は竜を引っ張ってベッドルームに連れ込んだ。
「じゃあその時言えば言えよ! 嫌だって」
「だってリンが自由協定って言ったから!」
「だってだって、って子供じゃないんだから…」
竜を座らせて、キッチンへお水を取りに行こうと立ち上がった時、竜が僕の手を掴んで強引に自分の胸に引き寄せた。
「離さない」
「…じゃあ、なんでいつもぼーっと見てるだけなの!? 」
僕は泣きそうになって、竜を睨み付けた。
「リンが誰といようと、オレの側にいてくれればいいと思ってたんだ! 」
竜が、僕から腕をほどいて、両手で自分の顔を覆った。
「でも、オレそんな我慢できる程大人じゃない…」
「だったら言えばいいじゃない、そうやって、その時に」
「…嫌われたくない」
「嫌わないよ、言って欲しかったんだから」
僕は、竜の声に、竜が泣いているんだって気がついて竜の顔を覆う両手をそっと掴んで離し、おでこにキスした。
まるで子供みたいな竜。
僕より身体だけどんどん成長していっちゃったのに。
「竜にやきもちやかそうと思って他の人といちゃついてた」
「狙い通りやきもちやきまくってた」
「知ってる」
「知ってたの? じゃあやめろよ…」
竜の長くて濃い睫毛に絡まった涙を僕は指で払った。
「ちゃんと言うまでやめないつもりだったから」
「意地悪」
「お互い様だよ」
「リンはどんどん綺麗になっていくし、心配だった」
「僕は竜がどんどんかっこよくなってくから、うらやましかった」
お互い、口にだしてから、顔を見合わせてぷっと吹き出した。
「僕ら、やっぱりバカップルだね」
僕は笑って、竜の唇にそっとキスをした。
ほんっと、ヘタレ。
酔ったふりしなきゃ本音言えなかったの?
お酒の匂いが全然しないよ。
僕はそのことを、心の中で笑って、口にはしなかった。
全然おいてきぼりなんてされてないじゃん。
竜って僕よりずっと子供なんだから。
竜が僕の鎖骨の下に、強く吸い付いて痕を残す。
「やだ、海行けないじゃん! 」
「オレの」
竜が痕がついたのを確認して、満足そうに笑った。
「…ばか。ほんとはわかってたんだ。竜が僕のことちゃんと思ってくれてるの。でも僕なんて竜にふさわしくないよ。ジュンが言ってたでしょ、悪魔だって」
「悪魔、かっこいい」
僕の名前をかっこいい、と言った時と同じ顔で、竜がそう言って、僕は困って竜を見つめた。
「オレがリンにふさわしくない。ばかだし。でも離れられないから離さない」
「じゃあたまには口にだして言ってよ」
「ん」
ほんとに聞いてるのか、竜は僕の服を脱がしはじめてベッドに押し倒した。
「明日は朝早くからあゆと希くんのバースデイパーティの準備だよ。今日は控えめに…んっ…聞いてる!? 」
「ん」
僕の話の途中にも関わらず、竜は僕の胸の突起を舐めて、甘噛みした。
「またやりまくってるって言われるよ」
「ん」
「聞いてるー? あっ…」
「ん」
いつも誘うのは僕の方だけど、エッチしてる時は竜は結構強引だ。
強引に僕を求めてくれるから好き。
だから僕はしょっちゅう誘っちゃうんだ。
「僕、竜のものになんかなんないからね」
「じゃあ一生追い掛ける」
「信じらんない」
「一生かけて信じさせる」
「…ばか」
「ん。だから離れない」
「……ばか。じゃあ一生追い掛けさせるからね」
(了)
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