母の妹、見参!

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母の妹、見参!

 「はるな、葬儀会場は押さえてんのか?」 「まだ」 「姉さんのことだ、どっかの会館で積立してる可能性があるね」  叔母は勝手知らぬはずの母の書斎に入り、隠していたらしき鍵をあっさり見つけて引き出しをあさり始める。時々リョウを顎で使い、ものの数分で葬儀会場の会員カードを探し当てていた。  彼女はそれを見ながら電話をしていた。その間リョウはキッチンに入って食器棚を開閉している。今はさほど気にならないが、他所の男が人ん()の物を勝手に触るのは止めて頂きたい。そもそも一体何を探しているのか? 「客用の湯呑と急須、何処だ?」 「はぁ?」  探すのを止めた時見つかることもよくある話で……って考えてる場合じゃなかった、何故そんな物が要るんだ? 「相手は仕事だが呼び立ててる以上客だろ、茶の一つも出さねぇつもりかよ?」  彼は見た目に似合わぬ低い声でぶっきらぼうに言い捨てた。その上早口でぼそぼそとした喋り口調で、控えめに申し上げて印象は一気に悪くなった。  こっちは親が死んだってのにそんなことにいちいち構ってられる余裕なんかある訳ない……私は心の中で舌打ちをしてそこ、と指差した。リョウは自分でしろよと言わんばかりの視線を向けてくるが知るか、気持ちよく動いてほしいのならその口の聞き方どうにかしろ。 「喪服どうすんだ? あんたの学校私服だったろ?」  書斎から叔母の声が聞こえてきたのをいいことにさっさとキッチンを出る。 「一応制服はある」 「あっそう、数珠は持ってんの?」 「持ってない」  叔母は書斎を物まみれにして足の踏み場も無いほどにしていた。母は几帳面な性格で折り目正しく整理整頓していたが、叔母は雑な性分で大体どこかは散らかっている。それでも物を探すのは得意と見え、必要な物をぽんぽんと見つけだしている。 「まぁざっとこんなもんだろ」  要りそうなものだけを机の上に並べ、散らかした分は適当、正にテキトーに収納スペースにぶち込んでいた。何から何までさせてるところアレなんだが、いくら死んでる人間の持ち物とはいえもう少し丁重に扱え。 「数珠はこれ使いな、丁度いい形見くらいにはなるだろ」  叔母は見たことの無い木箱を差し出した。
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