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人が動けば埃立つ
「ところで神戸さん、どうして恋人同士でもなかったふゆみさんのヒモ状態だったんです?」
あっ……長野さんからすれば気になることだよね?
「俺一遍結婚しててさ、離婚に応じてくれない元妻から逃げてたんだよ。なつひんとこだと足付いちまうからふゆみに頼った、大体十五年くらい前だからガキンチョだったはるなとは面識があるんだよ」
「お陰でこっちはいい迷惑だよ、毎日のように家に来られて『夫を出せ夫を出せ』ってマントラみたいに言い続けてさ。さっさと蹴りつけてくれりゃ済むものを調停に持ち込むのに二年近くかけやがって」
「そうは言うけど阿修羅化した女ってめちゃくちゃ恐いんだぞ。話が噛み合わなくて堂々巡りしかできない状況じゃほとぼり冷めるまで距離置くしかねぇだろうが」
少なくとも当時から仲を疑われる間柄だったんだね、この二人。にしたって普通女友達の所に身を寄せる? ましてウチ子持ちだったのに。
「普通男友達の所行かない?」
さくらも同じことを考えていたようだ。
「最初はそうしてたけど、ほとんどの奴が既婚でまぁ……」
「ヘタに家庭的だから惚れられてしまうんでしょうね」
「住まわせてもらってる礼のつもりだったんだけどなぁ」
神戸さんは当時を思い出したみたいで渋い表情を浮かべていた。彼は母と同い年だが芸能の世界の人だから結構な美男子だ。さっき来てた実父なんかよりも遥かに若々しいし……って千葉さんも長野さんも年齢を考えると十分イケてるけど。そう考えてみたら私のルックスでこの三人の娘ってあり得ないよね?
「お母さんデブ専だったのかな?」
「いや。アレはあいつが変わりすぎだ、昔はもっと細くていかにも御曹司様みたいな感じだったんだぞ」
「まぁ整形だけどな、顔はほぼいじってるし太りやすいから脂肪吸引手術なんかもやってたらしいよ」
叔母はまたしても凄い情報を披露してきた。つまり財力で見た目を磨いてきたクチか。
「まぁ何にせよ三人ともが姉さんの遺志を汲み取ってくれたことには感謝だね、私も随分助けられたよ」
「ふゆみは娘が予想以上に馬鹿だったことにあの世で頭抱えてたと思うけどな」
神戸さんはキツ〜いひと言を私に投げかけてくる。多分その馬鹿ぶりも実父に似たんだと思う。
「結構頑固ですしね」
「人の話聞かないし」
「大事なとこで気が利かない」
「割と欲しがり女だよね」
千葉さん、長野さん、リョウ、さくらの順で私を査定してくる。私そんなにひどい?
「野良犬しつける方がマシだな」
叔母のひと言が一番キツかった。
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