喪が明けて残ったもの

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喪が明けて残ったもの

 年が明け、二月になって母の一周忌を執り行うことになった。今日で晴れて喪が明けるわけだが、喪中感なく忙しない一年だったのでむしろこれで落ち着いて……はくれないか。なので我が家は朝からお寺さんを迎える支度で大わらわだ、といっても叔母におんぶに抱っこ状態で私はほとんど何もしていないのだが。 「こんにちは」  久し振りに千葉さんがやって来る。最近離婚が成立したそうで、心なしかすっきりとした表情を見せていらっしゃる。 「お帰りなさい、さくらちゃんは?」 「次の電車で来るって言ってたよ」 「なら大体二十分後くらいだな」  叔母は時計を見てから千葉さんを家に上げた。 「早いですね」  神戸さんのエプロン姿もすっかり見慣れた。音楽プロデューサーの側面しか知らない人が見たらどう思うのかな? 「えぇ、多少お手伝いさせて頂ければと思いまして」 「今日はいいですよ、明日からで」  明日? 何で? 「お前聞いてないのか?」 「何をです?」 「千葉さん今日からここで暮らすから。なつひ、ちゃんと言っとけよ」 「言ったけど」  叔母はしれっと嘘を吐く。 「聞いてない」 「それはあんたの問題」  私が注意力散漫的な言い方しないでほしい。 「まぁいいじゃないですかどちらでも。はるなちゃん、今日からまたお世話になります、親子共々」  さくらも一緒なのかよ? またあの歯に着せなさすぎるダイレクトな物言いに付き合わなければいけないのか……と思っていたらただいまぁと可愛い声が玄関から聞こえてきた。 「何か手伝うことある〜?」 「じゃあ花の水換えといて」 「はぁい」  さくらはさっと上着を脱いで仏壇にある花瓶を手に取った。 「あんたまた育った?」  彼女は視界に入った私に話し掛けてくる。 「体重は増えてませんが」  悔しいがさくらは今日も変わらず美人で細身だ。 「あっそう、相変わらず役に立ってなさそうね。ただ髪型はステキよ、似合ってる」  さくらに初めて褒められた気がする……私は先週切り揃えたばかりの短い髪を触った。
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