この世に、二人だけ

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「彼」の処理を終えて部屋に戻ってきた誠は、優子の脇に腰掛けた。そして、ちょっと考えてから、ためらいがちに言葉を発した。 「次はもう少し、辛抱強そうな男を……」  その言葉を、優子は途中で遮った。 「ううん……」  優子は軽く首を横に振り。そして、誠に提案した。 「このまましばらく、ニ人だけで暮らさない……?」  そう言いながら優子が浮かべた優しげな笑みに、誠は感動していた。それは誠があの日、優子を探してこの山荘にやってきて以来、初めて見たかもしれない笑顔だった。手足がなく、イスに置かれた人形のような姿で微笑む優子は、何か神々しささえ称えていた。 「ああ、君が、そう望むのなら……」  肩に置かれた誠の手の、その暖かさを感じながら、優子は思っていた。私に本当に尽くしてくれているのは、この人。私を満足させようと、自分を犠牲にしてまで、こうやってずっと自分のそばにいてくれている。優子は誠にそっと抱きしめられながら、なんとも言えない安堵感に包まれるのを自覚していた。  そう、この人とニ人なら……この人がいてくれるなら、それでいい。復讐も何も、もう考えなくていい。どこにも行くことが出来ない私にとって、この山荘が、私の全て。この世界に、誠とニ人だけなら、それでいい……。
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