この世に、二人だけ

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 そして優子は、なんとか自分に取り入ろうとする男を、あえて冷たくあしらう。それが優子をこんな体にした、「あの男」への間接的な復讐だったのだ。自分のいいなりになる女を求めてこんな怪しげな場所までやってくる男など、「あの男」と大差ない。優子は誠に連れられてきた男を「仮想敵」とし、それまでの屈辱的な日々の復讐を果たす。それがこのゲームの目的だった。  それは誠が、優子になんとか「生きる目標」を与えたくて、提案したことでもあった。その理由はなんでもいい。生きていてさえくれれば、生きようと思ってさえくれれば……。  誠は刑事を辞職し、この山荘に連れてきた男を始終監視し。先ほどのように、優子に危害が及ばぬように見張っていた。男達が優子にかしづかい、食事を与え、そして「夜の行為」に及ぶのを……。誠では、まだ若い優子の性欲を満たす事は出来なかった。愛していた優子の、今の変わり果てた姿を見ていると。誠は役にたたなくなってしまうのだ。だから誠は、それを男達に託した。彼女を満足させてやってくれ。彼女に優しくしてやってくれ……! 「彼」は、このゲームを始めてから、四人目の男だった。が、いずれも優子を満足させることの出来ないうちに、逆上して優子に襲い掛かり、そして誠に殺されていた。いつか優子が、心から満足感を得られた時。その時が本当に、優子が再び生きる事を始める時なのだと。ニ人はそう考えていた。いや、そう信じようとしていた。  自分達のしていることが、正しい事だなんて思わない。そして、優子が心から満足出来る日など、本当にやってくるのだろうか? ……そういった疑問符を、心の奥底にしまい込んで。ニ人は、このゲームを繰り返した。それがニ人の「日常」だったのだ。
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