この世に、二人だけ

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 彼の手が、乳房をゆっくりと揉みしだきながら、指先で乳首を刺激し始めた。優子は、ぐっ! と唇を噛み締めた。それは、屈辱に耐えるためではなかった。いや、これも大いなる屈辱には違いないのだが。優子は、刺激された乳首から、体中を電気のように走った快感に声をあげてしまわないよう、唇を噛んだのだった。  もちろん最初は、触れられるだけで吐き気をもよおしたが、こうしてそれが「日課」となり。しかも、「彼」が最大限に優子を気遣い、そして優子を「満足させよう」としていることを、まさに皮膚を通して感じ。それはいつしか「快感」になっていった。  彼もまた、日を追うごとに、優子のどこが一番敏感で、どうすれば優子が一番悦ぶのか、徐々にわかってきたこともあったかもしれない。優子の敏感な部分を、的確な強さで刺激する彼の指に、優子は思わず、そして何度も声をあげそうになり。それをようやくのことでこらえていた。  ダメよ、ここで声を出したら「負け」だわ! それでも、刺激が全身を伝う度に、体がびくっ、びくっ! と反応してしまうのは避けられなかった。だから彼も、優子が「感じている」のは十分わかっているだろう。声を出さない事は、今の優子にとって唯一の抵抗だった。
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