雨が降っている。

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今は誰にも声をかけれないし、何もできない、すべては昨日までの自分が仕残したことだよね。  今はジ・エンドしかない。  梅雨は明けるだろうけど、雨はやまないんだろうな、声に出して伝えたいことがこの雨のようにたくさんあることにやっと気づいた。  そのどれもが雨と一緒に流されたみたいに消えていったんだよね。  今晴れ間が出て太陽が顔を覗かせても心は晴れない。たぶん何かでごまかせないし、嘘もつけない。  なくしたものと、なくそうとしているもの、その両方がこんなにも痛めつけてくる。  明日の自分に繋ぐものがない、少しの希望とか、安らぎとか、ちゃんと用意していればよかった。  何かに録音して撮っておけばよかった。自分の声の記録を、それが後悔していることのひとつかな。  大事な言葉を大切な人に伝えることもできなくなる、それが辛いかな、ありふれた言葉がどんなに大事なものか、それだけは感じるよ、今なら。  どんなにか僕は言葉を汚して生きてきたんだろうってね、そういう後悔ばかり。  雨が台風並みに降り出したね、窓を叩く音が強すぎる、まるで嵐みたいに、明日まで降り続いたら、川の水面が高くなるね、あふれることはないだろうけど。  昨日までの安らかな生活がこんな形で消えてしまうとは、ちっぽけでもささやかでもいい、どんなものでもいい、自分を安らげる何かがほしい、切望するよ、こんな状態じゃ何もわからないし、何も見えない。  ただ雨はこんな時でも降り続くんだ、昨日と今日の自分なんて、どんな境目で区切ればいいのかわからないけどさ、雨だけはずっとやまない気がするし、不思議な音を立てて心の底まで染み込んでくる気がするんだ。
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