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「そ、その考えは立派だと思うな、俺」
「でしょー? 認知されたいタイプが悪いわけじゃないけど、一度考えた事を貫く倉下ちゃんはえらい!」
「でも、忍野の気持ちはどうなるんだ? あいつのした事は許されないかもしれないけど、あいつは倉下さんの側に、どんな形であっても一緒にいたいと思うんだ」
親友のため、兄山君はまず長友ちゃんを熱く説得する。そろそろ会話がズレてもおかしくないはずなのに不思議と噛み合ってしまった。親子三人で生きるべきという兄山君に、推しとして忍野君が避けられていると知っている長友ちゃん。
長友ちゃん、今度こそ誤解を解いて……!
「いや、推しの気持ちとか関係ないんで。こっちは心身に異常をきたすレベルだから避けてるわけだしー」
……誤解は解けなかった。きっと兄山君達には『忍野の気持ちは関係ない』『精神的に参っているほどの事をされたから避けたい』として意味が伝わった。
オタクとしては『推しがどんな気持ちで接してこようが、こちらは一挙一動で心拍数上がって健康被害となる』という意味なのに。
結局この誤解は、このあと私と忍野君が手を繋いで部室に現れるまで続いた。
そういうわけで兄山君と姉川さんは『良かった、家族三人幸せになってくれて良かった……!』と脱力し、うっすらと涙を見せたのだった。
END
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