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秋川の問い掛けに、杉生が然も当たり前のように言い放った。
「写真の話だよ。写真。これからあんたがおれに撮られるやつ。おれは何時も、見る側はもちろんのこと撮られる方のモデルも、そういう風になる写真を撮りたいと思ってる。身動きが取れなくなって、どうしようもなくジタジタとのたうち回る様な、死なない程度の毒を盛ったみたいな写真を」
「死なない程度の毒・・・」
杉生がシャンパンを口にし、ふと思い出した様につぶやいた。
「あいつは、晴季は見た目に寄らず図太いよな」
「え?」
「前に結構エグい写真をおれに撮らせたくせに、何事もなかったように今回はよろしくお願いしますって、笑って挨拶してきたんだぜ?しかも、すげぇ楽しそうに仕事してた。今おれ、とっても幸せですって顔に書いてあった」
「幸せじゃいけないのか?晴季が幸せになったらいけないのか?」
杉生は、秋川の絞り出すような問い掛けを全く無視した。
「あんた、晴季と付き合ってどれくらい?見たところ未だそんなには経ってないよな?」
「・・・一か月くらいだ」
「なるほどね。晴季が絶好調なのは、今が一番ラブラブな時だからか。あいつ、おれと付き合ってた頃は目が死んでたよ。顔も体もキレイな分、人形みたいだった」
その表情が秋川を苦しめたのに気付いたのか、杉生が追い撃ちをし掛けてくる。
「いや、死体みたいだったな。すげぇキレイな死体。まるで、死体とヤッてるみたいだった」
「!?」
杉生の手がひらめいて、空になった秋川のグラスを取り上げた。
そして、告げる。
「脱げよ。あんたもそれなりにはキレイに撮ってやるよ」
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