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初登場
瀬田を無理矢理に引っ張る様にして、内階段へと向かっている男がギフトとかいうカリスマフォトグラファーなのだろう。
それなりに離れていた秋川の目にも、瀬田が嫌がっているのは明らかだった。
瀬田を踊り場の壁際に追い詰めたギフトは、何の会話もなくいきなり瀬田へと口付ける。
ギフトの上体を押し退けやっと解放された唇で瀬田がつぶやく。
「ヨシト・・・・」
ヨシト。どうやらそれが、カリスマフォトグラファー・ギフトの本名らしい。
「最初からそう呼んでりゃあいいんだよ。前みたいに」
「離してください」
けして大声ではないが強い口調の瀬田にも、ギフトことヨシトは全く怯んだ風を見せずに、
「おまえ、変わったな。パッと見、全然判らなかった。今の方がゼッタイ、断然いい」
と、瀬田のあごを取り上を向かせる。
瀬田が顔を背けようがお構いなしだった。今度は両手で頭ごと抱えて、自分の方へと向き直させた。
「なぁ、又撮らせろよ。おまえにとっても、けして悪い話じゃないだろ?」
「!?」
何とも言えないいやらしさが、確かにヨシトの声にはあった。
「断ります。もう、あなたに撮られる気はありません」
「・・・おまえ、自分の立場が分かってんのか?」
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