家族だったんだ

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智菜は俺が四十の時に結婚した女性の連れ子だった。向こうはバツイチ。つまりステップファミリーというやつだ。 俺の両親はそんな人との結婚を良くは思っていないようだったが、今はそんな時代なのかと渋々認めてくれた。 それから俺は、実家とは疎遠になった。 当時、智菜は15歳。多感な時期な上に受験生。彼女の心中を気遣って、式は挙げなかった。 「おはよう、智菜」 そう声を掛けても返事はない。年頃の女の子にどう話しかけていいか分からない俺は、後ろ頭を掻きながら義理の娘の反抗的な後ろ姿を見送るしかなかった。 智菜がいなければ良かったのに。 溜め息を吐いた。 妻と体を重ねられるのは、智菜が元父親の実家に行く時、つまり月に一度だけ。何が起こったのか本人も分かっていたようで、帰ってくる度に機嫌が悪かった。 翌年智菜に弟が生まれた。智菜と結びつきができるようにと願って『大智(だいち)』と名付けた。
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