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「おやおや、お嬢さんがこんなところに座り込んで……」  店長きた! そう思っちゃうくらいのイケメンなおじさんが突然現れた。ナチュラルにドアを開けて入ってきた。  ううん、おじさんなんて言ったら失礼かもしれない。歳は多分四十歳前後くらいだけど、引き締まってる感じで隅々まで清潔感があって、落ち着いてるけど若々しい。しかも、声がいい。  そんな見惚れてしまうような人が私の手を取って立たせてくれる。そうして、服の汚れを払って、座らせてくれて靴を脱がせてくれるのさえ凄く様になってて、お嬢様にでもなった気分だった。うちは執事カフェでもないはずなんだけど、「コートも脱ごうか?」って言われると素直に脱いじゃう。  その人がその間何をしたかも知らずにコートをバッグと共に回収される。凄く自然で本当に執事なのかもしれない。促されるまま手洗いとうがいまで済ませた私はダイニングの椅子に座らされた。 「もうちょっとでご飯できるから待ってて」  イケメン君がそう言って持ってきたお皿にはオリーブの実とか生ハムとか、おつまみと言うにはお洒落な物が乗ってる。我が家にはなかったはずの物。  だから、一体、何を作ってくれてるんだろうって期待が膨らむけど……  間違いない。ここは私の部屋。見慣れた部屋の景色に見慣れない二人がいる。  一体どういうことなんだろう? これは夢じゃなくて現実だから怖い。私はこの二人を全く知らない。
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