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雷鳴を引き連れ、嵐が暴れ回る夜。
その厳かな儀式は礼拝堂で行われた。
集う子ども達は、一人残らず黒衣を纏い、ただ静かに祈りを捧げる。巨大な十字架の下の棺に向けて。
精巧に彩られたステンドグラスを、揺らめく燭台の炎を、禍々しく圧倒する漆黒の棺。暗赤色の薔薇が敷き詰められたその中央に、一人の少女が埋もれるように眠っている。
少女を見つめる子ども達は、暗い面持ちを作りながらも涙を流す気配は見せない。棺にすがりついて離れない、美しい白銀髪の少年を除いて。
「……っ乃愛っ……乃愛っ……!」
泣き崩れる少年は、ひたすら少女の名を繰り返す。
姉弟でありながら、少女はいつも、少年にキツくあたっていた。素直な弟が逆らわないのをいいことに、嫌がらせめいたワガママばかりを言って困らせた。端から見れば、その様子は時にいじめのようでもあった。
そんな扱いを受けながら、弟は最後まで意地悪な姉を慕い続けた。
「乃愛ぁぁっ……!」
赤みがかった黒い花が、真っ黒な箱の中から、場違いに華やかな匂いをふりまく。
他の誰もが黙する神聖な領域で、少年の泣き声だけがいつまでも響いた。
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