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店舗に新しいマネキンが届いた。
きっとあのマネキンのリース会社の営業のせいだ。
整った顔立ちで、紳士的であり、そしてこの若さで会社を引き継いた若社長ということだ。
どうやら社長を代替わりしてから売り上げはよいらしい。
たしかに、マネキンはデザインが変わり日本人らしいスタイルだ。
どれもハンドメイドで作っており同じマネキンはないらしい。
そして何とも言えない独特の雰囲気である。
どこか親近感があり悲しい目をしている。
若者向けのこの店との相性はとてもあっている。
店長はそんな若社長を落としたいらしく、頻繁にマネキンを取り換える。
今日もまたマネキンの入れ替えで若社長がやってきた。
店長が不在なため私が納品をすることになっていた。
「こんにちは、いつもありがとうございます。新しいマネキンはいったんここに置きますね。」
そう言って、持ってきたマネキンをバックオフィスに置いた。
今回のマネキンもとても美しくきれいだった。
「とてもきれいですね。もう芸術ですね。」思わず行ってしまった。
「ありがとうございます。とてもうれしいです。エリコの方も喜びます。」と、若社長はとてもうれしそうに笑った。
近くで見る若社長の笑顔は少年のようだった。
私は、鼓動が早くなるのを感じた。
「モデルの方がいるんですね。彼女ですか?」
「彼女なんていないですよ、エリコはモデルです。」
「いいですね、こんなにきれいに作ってもらえたらきっと喜ばれますね。」
「あの、前からお声掛けしたかったんですが、もしよかったらモデルになってもらえませんか?」
私は仕事以外に若社長に会えるかもしれないと思うと嬉しかった。
「いいんですか?でも私はモデルをするほどきれいじゃないですよ。」
「そんなことないですよ、あなたは手足のバランスも素晴らしいし素敵ですよ。
それにある程度調整もできますし。あなたなら出来ます。」
それはそうだろう。私はモデルを目指していてスタイルには自信があった。
「わかりました。よろしくお願いします。」
「引き受けてくれるんですか?ありがとうございます。もうすぐ仕事終わりですよね?
早速今日工場にきてみませんか?」
「え!今日ですか。今日はこの後、事務処理があるのでそれが終わってからならいいですよ。」
いきなりの誘いに驚きながらも私は業務外に一緒に入れることに心が躍った。
「では、一旦こちらも準備がありますので終わりましたら。こちらにお迎えに上がります。」
そう言って足早に出て行った。
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