case.2 酒呑童子

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「おっさんじゃねぇよ!!」 「まーまー、そうギャンギャン騒がないの。ユタくん、丁度いいからロウの戻し方も教えておくね」  九条はそう言うなり、カウンターの下から「銀」と書かれたボトルを取り出して、ロウの前に置いた。  それを見たロウは、一瞬にして人間の姿に戻った。 「……って、ええ!? 銀って、そういゔ銀゙ですか!?」 「いや、普通は銀製品を見せないと戻らないはずなんだよ。でも、この゙銀゙でも効くことが、最近分かったんだよ」 「へー、お手軽ですねぇ」 「お手軽じゃねぇよ! これ、案外疲れるんだよ!!」  その言葉を体言するように、ロウは肩で息をし、ダラダラと汗を掻いていた。本当に疲れるようだ。  九条はそれを気に留める……はずもなく、 「いいお勉強になったね、ユタくん」 と笑った。 「そうですね……えっと……」  優太はロウの事を何て呼ぶか決めあぐねた。  そういえばロウの名字を知らないことに、今更ながら気がつく。 「そういえば、挨拶がまだだったな。剛力(ごうりき)ロウだ。ロウでいいぜ」  それに気付いたのか、ロウが自ら名乗ってくれた。昨夜の優太の顔色といい、ロウは見た目に反して、小さな事にも気が付く人のようだ。 「ロウさん」 「おぅ。よろしくな」  そう言いながら、ロウが右手を差し出して来てくれる。優太は迷わずにその手を取った。見た目通りの、がっしりとした手だった。 「よろしくお願いします」 「九条になんかされたら直ぐ俺に言えよ?」  ロウがそう言うと、九条が「やだなぁ」と手を振った。 「僕がロウ以外に何かするワケないでしょー」 「おい、俺にもやめろよ」 「やだよ。ロウを弄るのが僕の生き甲斐なんだから」 「てめぇ、いつかその尻尾引きちぎって、ただの狐にしてやるからな!」 「やだー、助けてユタくーん」  二人のやり取りに、優太は思わず声を出して笑った。  それに九条とロウが嬉しそうに笑顔を浮かべた。 「……よし! 何か色々あったけど、落ち着いたところでユタ君の歓迎会でもしようか」  「お、そりゃいいな!」 「じゃあ早速始めちゃおう」  九条はそう言うなり、カウンターの後ろにあったシャンパンを開け始めた。 「え、ちょっ、お仕事は……?」 「んなもん気にすんな。どうせ客は来ねぇよ」 「えぇぇ……」 「ロウの奢りだから、売り上げは出るしね」 「そうそう……って、金取んのかよ!」 「当然じゃん?」 「ふざけんな!!」  また、ロウと九条が揉め始める。  そんな二人の姿を見て、優太はまた、声を上げて笑った──……。       case2:酒呑童子 終
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