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人がそういう、「少し違う人」に対して辛辣で、攻撃的になりがちなのは、人間である優太自身がよく知っていた。
いじめがその最たるものだ。もしも仮に……気持ちの悪い話ではあるが、全員が同じ性格、同じスペック、同じ顔だとしたら、いじめなんて起きないだろう。
でも──例えば、ちょっとブサイクだとか、背が低いだとか。例えば、少し真面目すぎてしまうとか。
人にはそういう「周りの人と少し違う人」を異常だと思い、排除したがる人がいる。そして、その結果、いじめは起こる。
かくいう優太も、マオと出会ったのがここではなかったとしたら、マオに対してどういう反応をし、どういう対応をしたかと問われたら、胸を張って「絶対に避けなかった」と答えられる自信がなかった。
だから……。
「……人間界には、人にはそれぞれ色があるよって言う意味の、十人十色って言葉があるそうだけど」
沈黙を破ったのは、九条だった。
「何で、人は一人一色だと思うんだろうね」
九条はそう言いながら、マロウブルーを指差した。
「マロウブルーなんて、一つ三色だよ?」
「……」
「一人二色でも、マロウブルーみたいに三色でも、何なら百色でもいいじゃない。ていうかさ、二重人格とか裏表とかある人がいる時点で人は一人一色じゃないじゃん」
九条はそう言いながら、いつもの笑顔を浮かべた。
「マオが、悪いわけじゃない」
だけどその声は、いつもより少し優しくて。
「……そうね……」
少し間を置いて、マオが小さなため息を吐きながら言った。
でも、そのため息とは裏腹に、マオの表情は晴れ晴れとしていた。
「アタシが二色だからいけない訳じゃないのよね」
「一人の中にも色んな色があるからこそ、きっと人って面白いんだよ。全員が一色だけのわかりやすい人だったら、面白くない」
それに、と九条は言葉を続けた。
「マオがその格好じゃなくなったら、逆に僕らが落ち着かないよ。ねぇ、ロウ?」
九条がロウにそう訊ねると、ロウは
「まぁ、人を襲うのは止めてほしいけどな」と笑った。
「あら、何それ。いやよいやよは好きのうちってヤツ?」
「あ? んなわけねーだろ」
「またまたぁ。照れちゃってぇ。このイ・ケ・ズ♡」
「あ"ーーっ!! やめろって!!」
全身の毛を逆立てて嫌がるロウに、マオは「あはははっ」と声を上げて笑った。
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