case.4 雪女

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 ロウとマオと天の世にも奇妙な組み合わせのやり取りに、優太は思わず小さく吹き出した。  それひとつで、三人の視線は優太に集まった。  ──あ……。  優太は顔の血が引いていくのを感じた。 「す、すみません、笑ってしまって……」  優太は即座に笑みを引っ込め、謝った。  ロウに仲間だと言われて少し浮わついてしまっていたが、しかし考えてみれば、お客様のやり取りを聞いて笑うなんて、失礼だ。  しかし、三人の反応は、優太の思ったものとは違った。 「え、やだ、ユタくん、何で謝るのよ!?」 「俺ら、怒ってねぇからな!?」 「……え、でも」  優太は困惑した。だって、今のは確実に怒られる流れだったはずだ。 「……ユタ、笑うことは悪いことじゃない」  天が、静かに言う。 「笑いたいときに、笑っていいんだ」 「……笑いたいときに……」 「そうだ。さっきそこの狼男も言っていたが、俺らは仲間なんだから、気を遣ったり遠慮する必要はない」  天の言葉は、優太の心に深く染み入った。  ──仲間なんだから……。 「そーよ。ただアタシたちは、ユタくんが笑ってくれて嬉しかったの。笑顔を見たくて、思わず見ちゃったのよ」 「あ? ユタ、俺らが見たこと気にしてんのか? んなもん、気にすんな、気にすんな!」 「あらやだ、ロウちゃんったら。原因わかってなかったの? 鈍感さんは、女の子に嫌われるわよ?」 「天に誘惑されたと勘違いするようなおめぇに言われたかねぇよ!!」 「あら、それは勘違いとは限らないでしょ? ねえ、天ちゃん♡」 「大いなる勘違いだっ!」  また、ぎゃいぎゃいと言い合いを始めた三人に、優太は今度は遠慮なく笑い声を上げた。  隣では九条も楽しそうにニコニコと笑っていた。 「ユタくん」  優太の視線に気づいたのか、九条が優太を呼んだ。 「はい」 「ここ、物凄くいいトコでしょ」  九条の問いに、優太は迷いなく答えた。 「はい。とても」  その答えに、九条が満面の笑みを浮かべた。 ***  ロウはビール、マオにマロウブルー、天には焼酎、天からの奢りで優太の前にウーロン茶が置かれ、みんなで雑談をしていたときの事だった。 「アタシねぇ、こう見えてもアパレルで働いてるのよぉ」 「アパレルですか!」 「似合わねぇよな」 「それ、どういう意味? ロウちゃん?」 「だーっ! 顔を近づけてくんな!!」  マオがロウに迫り始めたところで、バーのドアがガタガタと音を立て始めた。 「今日って、台風でしたっけ?」  優太は九条に訊ねた。 「いや、多分これは台風っていうより……」
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