case1.狼男

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 バーテンダーに勧められ、優太は「いただきます」と言いながらウイスキー梅酒に口をつけた。 「おいしい!」  ウイスキーの芳醇さはそのままに、梅酒のさっぱりさが加わっている。その上、炭酸が入っているから口のなかがスッキリするし、思わず進んでしまう味だ。 「気に入ってくれたみたいでよかった。ちゃんと一緒におつまみも食べないとダメだよ」 「は、はい」  バーテンダーにそう言われ、優太はサービスのローストビーフを口にいれた。  ──何だコレ……口の中で肉がとろける!!  あまりにも美味しいローストビーフに、優太は夢中になった。直ぐに平らげ、バーテンダーにローストビーフの追加を注文した。 「はいよ」  バーテンダーはローストビーフばかりか、チキンやサラダも出してきてくれた。 「やばい……どれもうまいっす」  ウイスキー梅酒も追加した優太は、その料理と酒の旨さに舌鼓を打った。 「それは良かった。沢山食べな」  気を良くしたのか、バーテンダーは「これ試作品だけど」とか「余りだから」と言いながら次々と料理を提供してくれる。優太はそれらを休むことなく食べ続け、気がついた時には目の前には空き皿が十五枚ほど並んでいた。 「もう、食べれないです……!」  こんなに食べたのはいつぐらいぶりだろうか。  優太はカウンターに突っ伏した。お腹がいっぱいで、暫くの間動けそうにもない。 「ははっ、こんなに沢山食べてくれて、僕は嬉しいよ」  バーテンダーはそんな優太を見て、嬉しそうに笑った。  その時、チリンチリン、という音がして扉か開いた。 「いらっしゃい」 「おぉ、珍しいな。先客がいるなんて」  優太はその声に反応してカウンターから顔を上げた。  そこには、ガタイのいい、強面の男性が立っていた。  一見本職の方のような風貌のその男性は何故か、頬にある大きな傷跡をポリポリと掻きながら眉間に皺を寄せて、優太をじぃっと見ていた。  ──睨まれてる……めっっちゃ睨まれてる!! えっと、俺、何かしたっけ!?  優太の顔から、血の気が引いていく。 「……おい、九条(くじょう)。お前、あの子にどんだけ酒を飲ませたんだよ。顔真っ青だぞ?」 「いや、あれはロウに怯えてるんだよ。君、すんごい怖い顔してるから」 「あ"? ……そうなのか?」  その会話はもう既に、優太の耳には届いていなかった。  優太は急いで立ち上がり、 「お、お邪魔だてしてしまってすみません!お勘定お願いします!」と言った。  それに慌てたのはロウだった。 「お、おい! ちげぇんだよ! 別に俺、怒ってねぇから!! んな慌てて帰らんでもいいから!!」 「で、でも俺、こんな格好ですし、目障りじゃ……!」 「んなもん、気にすんな!!」 「いや、でも……!」 「優太くん、優太くん」
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