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バーテンダーに勧められ、優太は「いただきます」と言いながらウイスキー梅酒に口をつけた。
「おいしい!」
ウイスキーの芳醇さはそのままに、梅酒のさっぱりさが加わっている。その上、炭酸が入っているから口のなかがスッキリするし、思わず進んでしまう味だ。
「気に入ってくれたみたいでよかった。ちゃんと一緒におつまみも食べないとダメだよ」
「は、はい」
バーテンダーにそう言われ、優太はサービスのローストビーフを口にいれた。
──何だコレ……口の中で肉がとろける!!
あまりにも美味しいローストビーフに、優太は夢中になった。直ぐに平らげ、バーテンダーにローストビーフの追加を注文した。
「はいよ」
バーテンダーはローストビーフばかりか、チキンやサラダも出してきてくれた。
「やばい……どれもうまいっす」
ウイスキー梅酒も追加した優太は、その料理と酒の旨さに舌鼓を打った。
「それは良かった。沢山食べな」
気を良くしたのか、バーテンダーは「これ試作品だけど」とか「余りだから」と言いながら次々と料理を提供してくれる。優太はそれらを休むことなく食べ続け、気がついた時には目の前には空き皿が十五枚ほど並んでいた。
「もう、食べれないです……!」
こんなに食べたのはいつぐらいぶりだろうか。
優太はカウンターに突っ伏した。お腹がいっぱいで、暫くの間動けそうにもない。
「ははっ、こんなに沢山食べてくれて、僕は嬉しいよ」
バーテンダーはそんな優太を見て、嬉しそうに笑った。
その時、チリンチリン、という音がして扉か開いた。
「いらっしゃい」
「おぉ、珍しいな。先客がいるなんて」
優太はその声に反応してカウンターから顔を上げた。
そこには、ガタイのいい、強面の男性が立っていた。
一見本職の方のような風貌のその男性は何故か、頬にある大きな傷跡をポリポリと掻きながら眉間に皺を寄せて、優太をじぃっと見ていた。
──睨まれてる……めっっちゃ睨まれてる!! えっと、俺、何かしたっけ!?
優太の顔から、血の気が引いていく。
「……おい、九条。お前、あの子にどんだけ酒を飲ませたんだよ。顔真っ青だぞ?」
「いや、あれはロウに怯えてるんだよ。君、すんごい怖い顔してるから」
「あ"? ……そうなのか?」
その会話はもう既に、優太の耳には届いていなかった。
優太は急いで立ち上がり、
「お、お邪魔だてしてしまってすみません!お勘定お願いします!」と言った。
それに慌てたのはロウだった。
「お、おい! ちげぇんだよ! 別に俺、怒ってねぇから!! んな慌てて帰らんでもいいから!!」
「で、でも俺、こんな格好ですし、目障りじゃ……!」
「んなもん、気にすんな!!」
「いや、でも……!」
「優太くん、優太くん」
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