case.2 酒呑童子

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「ん……んぁ……?」  優太(ゆうた)が目を覚ますと、そこには自宅の古びた天井……ではなく、板張りの天井があった。  ──ここは……? 「あ、目を覚ましたね」  不意に聞こえてきた声に、優太が視線を向けると、そこにはキツネ顔のバーテンダーが向かいのソファに座っていた。  ──そうだ。俺、酒を買いに家を出て……でもバーに入り込んで……でもそのバーが妖怪だらけで……。 「……九尾の狐さん」 「あ、記憶はあるみたいだね。良かった、良かった」  優太が体を起こすと、そこは小さな部屋だった。  小さいテーブルと、ソファが二つあるだけの部屋。そのソファの一つに優太は寝かされていた。 「ごめんね、うちのオオカミが驚かせちゃったみたいで。はい、水飲みな」 「……ありがとうございます」  実際、驚いたのはバーテンダー(あなた)のせいですけどね、と思いながらも優太は差し出された水を受け取った。  それを口に流し込むと、冷たい感触が喉を刺激して頭がスッキリとした気がした。 「ところで、優太くん」  優太が落ち着いたところで、バーテンダーが優しく声を掛けてきた。 「はい」 「君、仕事とかしてるのかい?」 「え? ……し、してませんけど……」 「そう。じゃあさ、良かったらうちで働かない?」  バーテンダーからの予想外の提案に、優太は思わずコップを取り落としそうになった。 「え!? な、何でですか……?!」 「いやいや、そんな身構えなくても、取って食うつもりじゃないから安心してよ」 「……本当ですか?」 「確かにキツネは肉食だけどさ」  優太は逃げようとした。  しかし、バーテンダーに腕を掴まれてしまった。 「流石に食べたりしないよ」 「いやいや、本当に食べないつもりなら肉食って情報いらなかったでしょう!?」 「じょーだんだって。……肉食は事実だけどさ」 「最後の一言が余計なんですよ!」  バーテンダーがどこからどこまでが本気なのか、優太には分からなかった。  とにかく、怖い。早くお家()に帰りたい。そして、引きこもりたい。 「本当に食べないから安心してよ。僕が食べるのは牛とか豚とか鶏だからさ。あれだよ、ホラ。人間と一緒だよ」 「……とかいって、」 「そもそも、市販の豚肉とかの方がお手軽で、食べやすいじゃない。人を食べる事にメリットを感じないね」 「そういう問題ですか……?」 「そういう問題だよ。ロウだっておんなじこと言ってたしさ」  その一言で、優太は思い出した。 「そういえば、あの狼男さん、大丈夫なんですか? 変身してましたけど……」
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