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 がっと目を見開くと同時に、俺のスティックがスネアとクラッシュを打ち抜き、全体重をかけたペダルがバスドラを響かせる。  Hate or Fate。  戦闘開始のゴングだ。  ギターとベースが一斉に加勢し、猛進撃が始まった。  まだ発売から10日、披露したのはこないだのイベント一回だけだっつーのに、フロアはすぐに、ヘッドバンギングで暴れ回る髪に埋め尽くされる。  よし来い、もっと来い。  綺悧の絶妙なデスボイスと、クリーントーンのメロディアスな歌。絡み合うサイドギターとリードギターのやり取りが、客の熱気を扇動する。  いきなり意識が吹っ飛びそうだよ。理性とか、常識とか、そんなもんは邪魔なだけだ。間違いねぇ、今日のライブは常軌を逸したヤバいもんになる。  朱雨の、チェーンソーを振り回すみたいなギターソロ。続く、ドラムとベースががっちり絡み合うフレーズ。  宵闇のベースは、俺のドラムを援護射撃してくれる。きっちり寄り添ったり、俺を先導したり、がちっと組み合って強調したり。今日も宵闇、お前は最高で最強の相棒だ。  不意に挟まる静かなメロディ。そして、綺悧が感情を爆発させて叫ぶラスサビ。
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