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 深い海の底に沈んでいるような、重苦しいAメロから、サビに向けて一気に浮上する。  宵闇が作る曲は、この急激な浮き沈みが印象的だ。メリハリとか、どんでん返しとか、そんな感じで聴く者の心に揺さぶりをかける。  そこに細かいフレーズ、押し寄せるタム回しなんかを仕掛けて、揺さぶられてるヤツが浮き上がって来られねぇように、頭を押さえ込んでやる。  俺らが作り出す深海に沈んだら、二度と浮かび上がれねぇ。呼吸が出来ない程の音に絶望しろ。  Like Abyssが終わると、拍手と歓声が押し寄せる。ああ、いい声だ。フロアの温度がしっかり上がってるのがわかる。まだ、たった3曲だってのに、仕上がってきてんな。  水を飲んでから、綺悧はフロアに向き直る。 「皆凄いね。大丈夫?」  綺悧が問いかけると、お客さんは腕を上げて、大きな声で答える。 「あはは、全然大丈夫そうだね! こんばんは! Fate or Fake初日へようこそ!」  Fate or Fakeってのが、この2daysのタイトルだ。それは真の宿命なのか、それとも偽りなのか。 「ほんと、後ろまでしっかり入ってくれてありがとう。後ろの人見える?」
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