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フロアの後方からわっと声が上がる。
おうおう、のんびりしてるヤツはいねぇみたいだな。
「早速Hate or Fateやらせてもらったんだけど、シングル買ってくれた人は? CDでも配信でもいいよ!」
一斉にフロアの手が上がる。殆どだな。ありがてぇ。素直に嬉しい。ミックスでテイクのいい所は随分殺されたけど、そんでもいい出来だろ。
「おー。ありがとう。MVも見てくれてる?」
イエスの意味の歓声が答える。この雰囲気だと、思った通り好評なんだろう。俺にとっては初めてのMVだ。わからないことだらけだったけど、宵闇がリードしてくれたから、カッコよく撮ってもらえた。最終的な仕上がりには自信すらある。
「じゃあ…もうね、皆知ってると思うけど…」
綺悧が笑顔でこっちを振り返る。
お客さんが、俺の名前を呼んでくれてる。
「前からいたみたいな顔してるけど、あの人誰だっけ?」
「おいおい綺悧!」
立ち上がって綺悧にツッコむ。綺悧がとぼけた分、客席からは「夕」という名前が繰り返し繰り返し叫ばれる。
俺は、両手を上げてから頭を下げ、それに応える。既にしっかり浸透してんな。ちゃんと覚えてくれてありがとう。
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