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「マジで? 見てどうすんだよ…」
ぶつぶつ言いながら、ご希望にお応えしてドラムセットの横に出る。ドラム台で一段高くなってっから、一応見えるかな。
って、何か前の方の人笑ってんですけど。
「夕さん、それ赤じゃないとダメなの?」
「あ?」
「ほら、黒でこう…ゴムのとこも黒いの出てるから、あれならトータル的に」
綺悧は人差し指で輪を描いて、俺の全身を示す。
「コーディネート出来ると思うんだけど?」
「赤じゃねぇと調子出ねぇんだよ!」
ずっと赤のみで貫いて来たんだ。今更他の色に変えられねぇ。こいつは俺のスイッチだ。
「オシャレ番長的にはどう?」
綺悧は俺の叫びをスルーして礼華に振る。
「差し色としてはいいから、形かな…」
「もう根本的に違うだろそれ!」
礼華はくすくす笑う。俺の靴ネタはどこまで引っ張られるんだ。
「ということで、夕さんでしたー! ありがとうございましたー!」
綺悧の掌が上手の袖へと案内…いやちょっと待て。
「帰らねぇよ!?」
「おつかれさんっしたー!」
朱雨、こら、お前。
俺はどかっとスツールに座って、腕を組む。
「もうちょいやらせろて!」
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