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ほんと、ステージに出ると、こいつら一気に隠してた実力出してくるよな。これ、昨日までしつこく練習してて、俺は心配してたんだぜ? お前らのそういうとこ、好きだよ。
照明が落ちる。
暗く、重い、誰もいなくなった古びた街に響くような鐘の音。
朱雨の繊細なアルペジオから始まる、Amazing Brace。
「Eli, Eli, Lema Sabachthani? 神は何故、僕を見捨てたの」
頭から、そんな絶望的な歌詞が歌われる。綺悧の演技力、本領発揮だ。
静かで淡々とした、突き放すようなプレイ。綺悧だけが、一人センターで苦しみ続けてる。見てる方がしんどくなる。
リハでもヤバい雰囲気出てたけど、倍ぐらい真に迫ってる。
これは、宵闇が前のバンドのディエス・イレでやってた曲が下敷きらしい。そいつをブラッシュアップして、仕上げたのがこれだ。ディエス・イレの大ファンだった綺悧は、思い入れも強いんだろう。
虚空に向かって差し伸べる綺悧の両手は、救いの手をつかめないままにゆっくりと落ちていく。
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