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崩れ落ちた綺悧を置き去りにするように、ギターの音が消えて行く。スポットライトもすうっと消えて行き、ステージは再び闇に戻った。
余韻を残して数秒。照明が緩やかに上がり、明るくなった。
さっきまでの厭世的な空気はどこへやら、綺悧はしゃんと立ち上がってぺこりとお辞儀をした。
「ありがとうございました!」
拍手が湧き起こり、俺らを讃えてくれる。俺も、ここまでなかなかいい出来だと思う。本編はまだ中盤。ここからもっと盛り上げる。まだお前ら、余裕だろ?
「っていうわけでですね…ってどんなわけだろ。ここテイクワンネクストは、ワンマンやらせてもらうのは初めてなんですけど…イベントとかで出させてもらうのと感じ違うね」
それ、何となくわかるわ。同じハコでも、対バンとワンマンじゃ感覚違うし、バンドが違っても違う。
音だけで言えば、このハコならこうするとバランスがいい、とか、しっかり響く、ってコツはある。でも、そうしても総合的な印象は別のハコみたいな感覚ってあるんだよな。
それは、お客さんじゃねぇかなって思う。
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