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それでも、宵闇が下した決断は、ここを俺のデビューにするってことだった。
理由はまだ知らない。でも、結果的にはチケットはソールドアウトに近くて、会場内は盛り上がってる。宵闇の選択は正解だった。
「ここでワンマンっていうのは、一つのね、目標だったんですよ」
綺悧の言う通り、1000人越えクラスの大型ライブハウスってのは、目安になる。武道館や東京ドームみたいに名指しではないけれど、ここや、LED東京、川崎ヴィル辺りが同等クラスで、客数が3桁から4桁に上がるから、目標ラインとして分かりやすい。
「だから俺ね、昨夜緊張しちゃって…」
「眠れなかったか?」
朱雨が聞くと、綺悧は笑って答える。
「8時間しか寝られなかったよー」
「普通に寝とるがね!」
「もうね、くーちゃんと一緒にぐっすり!」
くーちゃんってのは、綺悧がガキの頃から可愛がってるクマのぬいぐるみだ。よくツイートにも登場するから、俺も覚えちまった。
真ん中辺りの客が可愛いー! と声を上げる。うん、可愛い。
「朱雨くんは?」
「俺もめちゃめちゃ緊張しててな」
「8時間寝た?」
「明け方までYouTube見ちまった」
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